2024年、年間ベストアニメはリアルサウンド映画部で選んだので、実写作品のベストも書いておこうと思う。
しかし、今年はあまり映画館に行けなかった。例年より少ない。これは良くないのだけど、物価が高いので苦しいんだ、僕も。
それでも、とりあえず国内の作品と海外の作品を10本ずつ選んでみることにする。
国内映画
1:ナミビアの砂漠
2:ラジオ下神白 あのとき あのまちの音楽から いまここへ
3:悪は存在しない
4:あんのこと
5:かづゑ的
6:Chime
7:大きな家
8:劇場版 アナウンサーたちの戦争
9:ミッシング
10:ラストマイル
以下、選考の理由など。
『ナミビアの砂漠』は、なんというか、映画業界にもついに岡崎京子のような才能が出てきたのかと思った。『ラジオ下神白』のあの幸福な共同体が良かった。
『悪は存在しない』、僕は映画の中で議論してるシーンを見るのが好き。この作品のタウンミーティングが素晴らしかった。最近も『陪審員2番』の陪審員たちの議論が良かったが、ああいうの人間性出ますよね。『あんのこと』、人の裏表はニュースのベタ記事ではわからぬ。僕らは常にわかっていないことの方が多いのだ。そして、本作と『ナミビアの砂漠』の2本で河合優実は素晴らしい存在感を発揮した。すごい人だ。
『かづゑ的』は瀬戸内海のハンセン病回復者である宮崎かづゑさんを追ったドキュメンタリー。表現者としての宮崎さん、その生き様。非常に豊かな感性をスクリーンに刻みつけていた。黒沢清は、今年3本も作品があったのだが、『Chime』をチョイスした。
『大きな家』は、『14歳の栞』チームの新作。児童養護施設の子供たちの「メディア向け」ではない表情と言葉が見られる。『劇場版 アナウンサーたちの戦争』はNHKの作品。NHKが自らの戦争加害責任を描く内容で、戦争当時、放送がいかに戦火を拡大させたのかを描いている。昨今のメディア状況を考える上でも参考になる一本。
『ミッシング』は吉田恵輔監督のらしさが存分に出た。『あんのこと』もそうだが、ニュースや報道だけじゃ人間のことは本当によくわからないものだ。じゃあ、なんで僕らは日々そんなものを見ているのだろう。見なければいいというもんでもないことはわかる。『ラストマイル』は、グローバル資本に追い詰められていく個人の描写として優れている。なんで日本でブラックフライデーをやってるんでしょうね。
海外作品
1:マリウポリの20日間
2:クレオの夏休み
3:流麻溝十五号
4:葬送のカーネーション
5:青春
6:パスト ライブス 再会
7:陪審員2番
8:ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ
9:ゴッドランド GODLAND
10:リッチランド
以下、選考理由など
『マリウポリの20日間』、現実の無慈悲さ、過酷さ。その筆舌の尽くしがたさ。筆も舌もあの現実には届かないがカメラは届いた。『クレオの夏休み』の絆の美しさにやられた。こういう映画を見たくて映画館に行っているなと思う。
『流麻溝十五号』は台湾映画。白色テロ時代の女性の政治収容犯を収容する島での日々を描いた作品。台湾の複雑な社会背景がよく分かる作品。『葬送のカーネーション』はトルコ映画。いい絵がいっぱいあった。マジック・リアリズム的な幻想描写もセンスが良かった。
ワン・ビンの『青春』は驚きがあった。過酷な労働実態と快活な若者たちの姿。まさに「青春」だった。『パスト ライブス 再会』はすれ違いのメロドラマとして近年最も出色では。僕も留学経験あるので、自分のわからない言語で会話された時の挟まれる時の、あのなんとも言えない疎外感は覚えがある。彼女の韓国名を呼ぶ人は、もうあの韓国人の彼しかいないのだ。それは十分特別な関係なんだよな。
『陪審員2番』、イーストウッドはやっぱりすごいなと思った。脚本が良い。キャスティングも素晴らしい、カッティングもいい。ダレないタイミングでカットしてつなげるんだよな。構図も気取らずにすごく良い。アルモドバルの短編『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』もこれも熟達の技みたいなものを堪能できる感じ。
『ゴッドランド GODLAND』も変な作品なんだけど、自然の厳しさは理不尽なくらい人に平等で、日本的な自然観に近いものがある作品だった。『リッチランド』は『オッペンハイマー』が描いていないものを描いている点で良かったし、撮影もいい。