2025年1月20日、トランプが再びアメリカ合衆国の大統領に返り咲いた。
いきなり、衝撃的な発言が多々飛び出しているようだが、これからの4年間、彼の発言に世界は一喜一憂させられることになるのだろう。いきなり、メキシコ・カナダへの関税を検討と報じられた。しかも、2月1日からである。もうすぐじゃん。
トランプ大統領“メキシコとカナダに25%関税検討”2月1日から | NHK | アメリカ
その言動の全てを分析することは、ここではしない。ここでは、僕の関心領域である映画産業への影響について考えてみたいと思う。
トランプとハリウッドは対立するのか?
ご存じのようにハリウッドはカリフォルニアにあり、民主党支持者が多い。選挙キャンペーン期間中も多くのスターがハリス支持を表明しては敵対するトランプを激怒させていた。こういう過程を見つめると、ハリウッドとトランプは犬猿の仲のように思える。
だが、トランプはハリウッド流のショービズマインドに骨の髄まで浸かっている人間である。僕は、根っこの部分ではハリウッドとトランプには大きな共通点があると思っている。
ハリウッドレポーターがその辺りの複雑な精神性のつながりについての記事を書いている。
Why President Donald Trump Rails Against Hollywood
上記の記事の小見出しには、「エンターテインメント・ビジネスの原理原則にこれほど依存した大統領はいない。そして、これほどまでにハリウッドと険悪な関係になった大統領もいない。」とある。トランプの影響力拡大のやり方は、ハリウッドの脚本術とそっくりだと指摘している。
トランプはとにかく何かをわかりやすく敵認定する。そして、デマでもなんでもいい、それを正当化できる情報を引っぱってきて、自信満々な態度が絶対に崩さずに敵だと主張し続ける。そして、トランプのハリウッドに対する嫌悪感の一部は演技的だともこの記事は指摘している。おそらく、それはそうだろう。自分がハリウッドのショービズ世界でのし上がってきたのだから、潜在的な嫌悪感を持っているとは考えにくい。もちろん、一部のリベラルなスターたちには反感を持っているだろうが。
MPAなどは、トランプの大統領就任を祝福するメッセージを発しているという。それはテック業界がすごい勢いでトランプにすり寄っているとの同様の生き残り戦略の一環だ。
こういう時、ハリウッド全体は極めてマキャベリスティックに行動するものだと僕は思っている。彼らがDEIを推進していたのは、そっちの方がビジネス上合理性があると判断していたからにすぎず、儲からないならあっさり辞める可能性がある。
つまり、ハリウッドは長いものに巻かれるかもしれない。全体としては。そして、山火事の被害の支援を必要としているという事情もある。
また、トランプの仕掛ける関税外交が、ハリウッドにも影響を与えるかもしれない。関税への報復措置として、中国などの大きな市場でハリウッド映画の制限が課せられる結果になることも考えられるだろう。
ハリウッドは国の補助金などに依存している体質ではないが、トランプの影響は避けられないだろうとハリウッド・リポーターは考えているようだ。
「トランプがアメリカのエンターテインメント消費者に与える影響力は、まさに映画産業が消費者に与える影響力が弱まりつつあるときに強まっている。」と上記の記事は記している。
トランプはハリウッドの黄金時代を目指す?
AP通信は、メル・ギブソン、シルベスター・スタローン、ジョン・ボイトの3人は大統領就任式に招かれたことを記事にしている。この3人はハリウッドの特使として招かれたという。そして、トランプが「アメリカ合衆国のように、ハリウッドの黄金時代が再びやってくる!」とトゥルース・ソーシャルに書き込んだことを報じている。
なんとなくだが、「自分になびくなら、別に冷遇はしないよ」とハリウッドにメッセージを送っているようにも見える。MPAのような業界団体は、そういうトランプのやり方に対して敏感に反応しているようにも思える。
個々のスターのレベルではどうなるかわからないが、ハリウッド全体は保守化・右傾化のポーズをとることはあるだろう。表向きにはDEIの推進も控えるようになるならば、それが作品の内容にも反映される可能性はある。Vultureではそのように予測している。
4 Predictions for Hollywood in the Second Trump Presidency
この記事では、「テレビ局は保守的な視聴者を引きつけるため、そしてトランプ大統領をなだめるため、さらに右傾化を進めるだろう。」としている。
しかし、国のトップが変わったら、急にハリウッドも態度を変えて今までと異なることを主張し始めたら、「今まで言ってたこと、描いてきたことはなんだったんだよ」となってしまうだろう。そうなると、そもそも信頼度が低下する。いずれにしてもハリウッドの影響力は低下するのではないか。
LA Timesが書くように、「ハリウッドはすでに、そのビジネスモデルの縮小と存続への懸念に直面している」状態だ。この4年間は正念場となるだろう。