『東京サラダボウル』第三話「あかちゃんとバインミー(前編)」では、幼児の誘拐事件が描かれた。今回も面白かった。バインミーが食べたくなる回だ。
おむつ盗難事件と幼児誘拐事件
馴染みの八百屋さんで赤ん坊の世話をしている主人公の鴻田麻里(奈緒)は、そのせいで遅刻。いきなり怒られる。そして、ベトナム人の取り調べ。どうやら万引き窃盗事件を捜査しているようだが、相変わらず郷土の美味しいものの話に余念がない。
一方で、日本人男性と中国出身で帰化した女性の間に生まれた赤ん坊の誘拐事件が発生する。アリキーノこと有木野了(松田龍平)は通訳として、その捜査に参加、中国出身の妻から事情を聴取することに。
身代金目的ではないようで、一向に犯人からの連絡はなし。捜査本部は、他の動機の線から捜査することにして、日本人の旦那が多額の借金を抱えていて、それを最近一括返済したことを突き止める。
それは、戸籍の売買だった。馴染みのアジアンパブで持ち掛けられ、戸籍を売ったのだという。しかし、赤ん坊誘拐との接点は見つからず、捜査は難航する。
他方、鴻田は万引き捜査のためにドラッグストアの店員として潜入捜査をやっていた。店員としての勤務を完璧にこなして、めちゃくちゃ馴染んでいるのが面白い。この店では、赤ん坊用のおむつが頻繁に盗難被害に遭っているのだとか。そこで、不審な外国人男性を目にするが、関係なさそうと鴻田は判断。
しかし、最後にその男性の自宅に誘拐された赤ん坊がいることが明かされる。果たして、この男性はなぜ赤ん坊と一緒にいるのか、謎を残して前編は終了する。
幼児誘拐の実態
わが子を誘拐された中国出身の女性は、「どうしてこの国で赤ん坊が誘拐されるの」と絶望して、泣き崩れている。「この国で」という言葉の裏には、中国における幼児誘拐の実態がある。
アリキーノいわく、中国では幼児誘拐は人身売買とセットで昔からあると語られる。跡継ぎのいない家に売られたり、働き手の少ない農家に売られたり、女の子の場合は、10代のうちから結婚相手にさせられるために誘拐されることがあるという。
以前、中国の一人っ子政策の闇に迫るドキュメンタリー映画『一人っ子の国』を観たことがある。
この映画では、生まれた子供をブローカーを通じて国外に売るという実態があったことを告発している。自治体が主導で売買していたという話も出てくる。このドラマで描かれる誘拐絡みとは異なるかもしれないが、根っこの部分では共通するものがあるかもしれない。
日本ではそういう事例はないだろうと中国出身の女性は思っていたから、上記のセリフが出たのだろう。
事件の真相とともに、大きなストーリーとしての黒幕の存在は徐々に浮上してきた。フードを被ったメガネをかけた男性が、どうやら戸籍売買をもちかけたアジアンパブの女性を始末したと思われる描写があった。アリキーノの過去にも関わっていそうな雰囲気もだしており、本作のラスボス的な立ち位置になると思われる。
今回の食べ物はバインミー
本作は毎回、異国の美味しそうな食べ物が登場するのがお決まりになっているが、サブタイトル通り今回はベトナムのバインミーが登場する。バインミーは、ベトナムのサンドイッチで、フランスパンにたくさんの野菜と肉をはさんだものだ。
ベトナムでフランスパンを用いた食べ物が、一般に愛される食べ物担っている理由は、かつてベトナムがフランスの植民地だった歴史と関係しているだろう。それが今日、色々な国に普及して日本にも入ってきているのは、文化というのは、色々な地を経由して、様々なものを取り込んで発展していくことを表している。
色々な文化や習慣を取り込んで、新しいものが生まれていくということをバインミーが象徴している。このドラマにふさわしい食べ物だ。