香取慎吾主演の『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第3話は、この作品の本質がズバリとセリフに出てきた回だったと思う。
安田顕演じる真壁が、大森一平(香取慎吾)に言うセリフ「問題があるから、政治家がいるんだ」という言葉だ。政治家になるために家族の問題を利用しようとすることにちょっと躊躇する一平に対して、今から悪人みたいなことを言うぞと前置きしてから、このセリフを言う。
確かに、政治家は社会の問題を調整する役割を担う存在だ。真壁の言葉は正しい。第3話までこのドラマは、1話ごとに社会の中にある問題を取り上げているのだが、それは最低男の一平が自分の為だけに政治家になろうとするところを、社会の中の問題に気付かさせるプロセスを描くためなんだろう。
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3話では、不登校の問題が描かれた。一平の姪・ひまりが小学校で母親のことをからかわれてケンカとなり、学校に行きたくないという。一平は不登校の姪をきっかけに不登校問題を知るためにPTAに参加、そこで名前と顔を売って選挙のときに応援してもらおうという狙いだ。
しかし、一平は不登校の問題に対して、とても真摯に学び気づきを得ていく。堺正章演じる区長が、不登校の強制的な矯正プログラムを推奨しており、それに参加を持ちかけられるが丁重にお断りするし、不登校の子どもを集めてキャンプに行ったりする。ひまりとの仲も、1話から険悪な状態が続いていたけど、心の距離が近づいていく。
そして、どうしても集団生活の学校に馴染めない子はいるんだという悟りを得ていく。
このエピソードでは、ひまりとその父親・正助のドラマも描かれる。不登校になったひまりを心配する正助だが、その気持がむしろひまりを追い詰めていっていたことに気付かされる。子どもは敏感なので、親に心配かけたり、重荷になっていたりするのではと心配してしまうものだ。正助が「子育てを失敗した」という言葉に敏感に反応して、自分は「失敗した子」と思い悩んでしまう。
この作品では、正助はその名の通り大抵の場合、正しいことを言うのだが、今回のエピソードではその正しさに縛られてしまったのか、わりと失敗をしてしまう。この辺りの脚本の運び方は上手いと思う。
実際、一平くらいちゃらんぽらんな大人の方が、ときに子どもにとって安心できる存在だったり、相談しやすかったりすることってあると思う。山口紗弥加演じる母親にゲームを取り上げられている少年の心を開かせるのも一平だった。一平は正しい大人とは言えないキャラクターとして描かれているが、あれくらいの感じの方が色々と子どもにとって打ち解けやすいことはある。
不登校の実情に接した一平は、どうすれば良い支援ができるのかを考えるようになっていく。政治家らしいことを言うようになったと真壁にも言われたが、本当の意味で立派な政治家になっていくのか、もともとの打算的な野心が上回るのか、最後に政治家としてのプロフィール作りでにやりと不敵な笑みを浮かべる一平の顔は、色々な解釈ができる。今後のエピソードも楽しみだ。
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