ベルリン国際映画祭(ベルリナーレ)と並行して開催されるヨーロピアン・フィルム・マーケット(EFM)の新責任者に就任したタニヤ・マイスナーが、インディーズ映画業界の課題と今後の展望について、ハリウッド・レポーターで語っている。コロナ禍以降、インディーズ映画市場は大きな打撃を受け、いまだに回復途上になる中、マーケットの役割について語り、新たな観客を創出し、ビジネスモデルの変革が必要だと訴える。
タニヤ・マイスナーは、フランスのメメント・フィルムズ・インターナショナルやセルロイド・ドリームスでセールス&アクイジション担当重役を務めるなど、20年以上にわたりヨーロッパ映画界で活躍してきた。ベルリンのEFMには長年参加しており、その名は広く知られている。今回、彼女はベルリナーレ・プロの新ディレクターとして、ベルリンの映画産業全体を統括し、マーケットを指揮する立場となった。2月13日から19日まで開催されるEFMには、140カ国以上から約12,000人の映画関係者が集まり、600以上の出展者が映画を売買するという。
インディーズ映画業界の危機
インディーズ映画業界は厳しい状況にある。COVID-19以前の水準を大きく下回る興行収入、インフレによるコスト上昇、そしてストリーミング業者がインディーズ映画から手を引く中で、映画製作者や販売者、出資者は危機にさらされている。
マイスナーは、この状況を打開するために、EFMの刷新を進めている。新たに「Gen Z Audience Award」と「Distributor Award」を導入し、若年層の観客や配給業者への注目を高める施策を打ち出した。
「Gen Z Audience Awardでは、若い世代の観客を映画業界に迎え入れ、世代を超えた交流を促進したい。彼らが映画について議論し、関わる方法を進化させることが目的だ」と説明する。
また、「Distributor Award」については「映画業界において配給会社の役割は極めて重要だ。映画祭では監督やプロデューサーが評価されがちだが、配給業者にもスポットを当てるべきだ。配給業者の活動は文化的な価値が高く、民主主義を支えるものでもある」と語った。
Z世代賞の審査員は、映画学校出身の20〜28歳の若者で構成されており、プロデューサーと直接対話し、フィードバックを行う。マイスナーは、この取り組みを「映画批評の民主化」と位置付ける。
市場の現状と持続可能なビジネスモデル
現在、インディペンデント映画業界は大きな経済的圧力に直面している。多くの関係者が持続可能なビジネスモデルを模索し、リスクを分散するための協業にシフトしている。
「活気ある映画文化があれば、観客は増える。だからこそ、共同制作やクリエイティブなコラボレーションが重要だ」とマイスナーは指摘する。
また、持続可能性も大きな課題となっている。「グリーンシューティングの推進や、デジタルインフラへの投資が必要だ。しかし、導入にはコストがかかる。AIの活用は大きな可能性を秘めているが、同時に破壊的な側面もある」と語る.
データとAIが未来を拓く
さらに、「今後のEFMはデータ主導のマーケットプレイスへと進化しなければならない。消費者との関係はデータとAI、テクノロジーによって管理される。だからこそ、私たち自身がこれらのテクノロジーを活用し、スキルを磨くことが不可欠だ」と締めくくった。
持続可能な映画産業の発展はいかにしてなしうるか、ストリーミング市場の拡大によって劇場という市場の将来性、そして国際映画祭でかかるようなタイプの映画が今、どのように、どこで求められるのか。模索が続いている。
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