宇宙物理学者の佐々木亮氏の新書『やっぱり宇宙はすごい』を読んだ。
佐々木氏は、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」という番組を自ら配信していて、宇宙研究の面白さ、宇宙の「すごさ」について紹介している人物だ。
この本は、最新の宇宙研究の状況について詳しく紹介してくれている。だが、あまり難しくは書かれていない。平易な文章でわかりやすいたとえを駆使して、宇宙への興味を駆り立てることを第一の目標にして書かれている本だ。
とにかく、著者がこの本で伝えたいことは「宇宙はすごい」ということだ。こう書くとなんだかバカっぽい印象を受けるかもしれないが、とにかく宇宙は「すごい」としか形容できないような広大さと深遠さに溢れていて、探求心を刺激されるのだ、という著者の想いが文章から伝わってくる。
章タイトルも「すごい物質」とか「すごいブラックホール」といった具合に、必ず「すごい」がつけられている。で、実際に読んでみると確かに「すごい」という感想が出てくる。
例えば第3章「すごい物質」では、ダークエネルギーやダークマターという未知の物質が紹介されている。宇宙の95%は未知だという。そのうちの68%は「ダークエネルギー」、残りの25%が「ダークマター」だという。今も宇宙は広がり続けているが、それはダークエネルギーの効果によるもので、それが何なのかはいまだにわかっていない、しかし、あると仮定しなければ説明がつかないのだとか。
そんなわけのわからない未知の物質が現象を解明するために、「すごい」研究が世界中で行われていることを、著者は熱っぽく語っている。
「宇宙は広大」というのは、だれでもわかる。でも、どれだけ広大で未知が広がっているのか、実感することは普通の人間には難しい。この本は、その宇宙の広大さと未知さに輪郭を与えてくれて、ワクワクさせてくれる。
何より、著者自身が宇宙の研究と宇宙について語ることを楽しんでいることがよく伝わってくる。宇宙研究の入門書として、良い本だと思う。中学生くらいなら、ある程度内容を理解できるのではないかと思う。