国立映画アーカイブは、国立アートリサーチセンターの協力のもと、国立情報学研究所と共同で開発したウェブサイト「映画遺産—国立映画アーカイブ映画資料ポータル—」に、新たな映画資料を追加した。
同サイトは、映画機材（撮影機・映写機）の画像・データを最初に公開し、第2弾として「映画館プログラム」を掲載してきた。今回、第3弾として新たに「映画館チラシ」873点が追加された。
公開されたチラシは、映画資料収集家であった故・御園京平氏の旧蔵品《みそのコレクション》に含まれる戦前期のものである。現在のように配給・宣伝会社が制作した作品単位のチラシではなく、映画館が自ら上映作品を宣伝するために作成したものが中心だ。発行時期は1905年から1936年にわたり、劇場の所在地は東北地方から九州地方まで広範囲に及ぶ。映画史の研究だけでなく、地域史の資料としても貴重である。また、映画以外の興行情報が記載されたチラシも含まれており、当時の映画館が果たした文化的役割を知る手がかりとなる。
さらに、今回のオンライン公開は、これほどの規模で「映画館チラシ」を一挙にデジタルアーカイブ化する国内初の試みとなる。国立映画アーカイブは、今後も引き続き資料の公開を進めていくとしている。
代表的な公開資料
第一福宝館の特集プログラム・チラシ（1920年）
国立映画アーカイブの建つ土地でかつて営業していた第一福宝館のチラシ。映画監督・牧野省三がミカド商会を立ち上げて製作した『都に憧れて』が、日活の作品として上映された経緯がうかがえる。
京橋日活館の特集プログラム・チラシ（1923年）
第一福宝館は関東大震災後に京橋日活館と改称。フィルムが現存しない溝口健二監督の『狂恋の女師匠』や、撮影途中に主演・尾上松之助が亡くなった『侠骨三日月 前篇』（池田富保監督）などが上映された際のチラシが含まれる。
加賀屋座の特集プログラム・チラシ（1905年）
福井県の加賀屋座で、日本義勇活動冩眞會が日露戦争関連の記録映画を上映した際のチラシ。興行収入の一部を義勇艦隊建設費や公共団体へ寄付すると記載されている。
桐座の特集プログラム・チラシ（1922年）
群馬県桐生市の桐座のチラシ。俳優・衣笠貞之助が、映画と演劇を組み合わせた連鎖劇『悲しき結婚』（1922年）の映像を桐生近郊で撮影したことが記されている。
道頓堀朝日座の特集プログラム・チラシ（1924年）
道頓堀朝日座が懸賞付きチラシを発行し、クロスワード・パズルの正解者1000名に一等席の招待券を進呈した様子が記録されている。
大阪松竹座の特集プログラム・チラシ（1924年）
1923年に映画館として開館した大阪松竹座のチラシ。メアリー・ピックフォード主演『嵐の国のテス』（1922年、ジョン・S・ロバートソン監督）の日本公開にあたり、ピックフォードからの電信をそのまま掲載している。
