TBSの金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』第6話「暴走する危険な正体!退路なき娘の強行策」は、東賀山事件で生き残った赤ん坊、林川歌の正体に迫る回になった。本作の考察要素の核心の一つとも言うべき、重要な要素だ。
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阿南の過去
阿南由紀(瀧内公美)の調べに応じる山下心麦(広瀬すず)。阿南は、謎の黒幕の人物に、この心麦と接触する目的は、彼女に山下春生(リリー・フランキー)の残した手紙はラーメン屋の染田の偽造だと信じさせることだと指示していた。その指示どおりに、阿南は状況証拠と仮説を並べ立てて、心麦の気持ちを誘導しようとしていく。
しかし、心麦の父を信じる気持ちは強かった。染田の遺体から薬物反応があったという、心麦の知らない事実を突きつけられ動揺しながらも彼女は、染田と父と信じる心を失わなかった。主人公としての芯の強さを見せてくれたシーンだ。
阿南は黒幕の男から次の指示を仰ぐ。今度は赤沢正(藤本隆宏)を使って遠藤友哉(成田凌)に手紙の偽造を指示したと自白させろという。
阿南は母からの電話を受け取って、過去を思い出す。父親は一緒に済んでおらず、母は愛人という立場だった。母のようにはなりたくないと自立して警官の道を歩み、バリバリ働いて結婚もした。順調に出世したのだが、夫からは嫌味を言われる。女性は仕事をするなというのか、阿南は悔しくて仕方なくて結局、離婚することにした。母はそんな阿南に対して、「可愛げがなさすぎたのよ、女は愛されるのが一番」と語りかける。阿南と母は、絶望的なまでにすれ違っている。そんな自分を、阿南は親不孝者だと自嘲する。だから、心麦の父を信じる気持ちの強さが眩しく思えるのだ。
心麦の新たな協力者・鳴川
事務所にもどった松風と心麦を待っていたのは、かつて春生が傍聴した裁判に出席していた、三木田辰雄(石丸謙二郎)ともう一人の弁護士、鳴川徹(間宮啓行)だ。
関西弁で大きな声で喋る鳴川は、自分のペースでどうでもいいことばかりを喋り倒す。なかなか強烈なキャラクターの持ち主で、松風も心麦も面食らうが、遠藤友哉は無実だと思うという発言を聞き、頼もしさを感じ、協力をお願いすることになる。
一方、神井孝(磯村勇斗)は赤沢に接触する。挑発的な態度を繰り返し、さらに翌日にだす記事を手渡す。その記事は赤沢の顔を硬直させた。それは東賀山事件と染田の死がつながっていることを示唆する内容で、暴力刑事の「A刑事」という人物も登場する。これは赤沢のことだ。
赤沢は、刑事は自白させてなんぼ、みたいな考え方で取り調べを行ってきた。そのことを久世正勝(篠井英介)に注意された過去を持つ。「ずっとお前を見ているぞ」と言われたことがずっと赤沢の心に引っかかっているのだ。ちなみに神井は、久世が赤沢の元上司だったことも知っていた。神井は態度はムカつく男だが、記者としては本当に優秀で、常に核心をつくような事実にたどり着いている。
その神井の記事のことで阿南は赤沢を呼び出し、どんな手段を使ってもいいから遠藤友哉を自白させろと指示を受ける。
一方、心麦は林川歌を引き取った津寺井幸太(島谷宏之)に会いに行きたいと言い出す。それには鳴川が付き添うことになった。待ち合わせでもうるさい鳴川。なんなんだこの人は。でも、緊迫感のある展開が続くので、コメディリリーフの人もほしいという気持ちにはなる。
林川歌を引き取った津寺井の態度が意味するものは…?
津寺井宅に到着したが、津寺井の対応はそっけない。林川歌の名前を出した途端、インターホンを切ってしまう。しかし、心麦は再度インターホン越しに、自分は林川歌を間違えられて困っていると訴え、その必死さに応えるように、津寺井はドアを開けた。
心麦は、自分は歌なのか、自分は歌に似ているのかと単刀直入に津寺井に尋ねる。津寺井は、歌は今シンガポールに留学中だし、全然似ていない、春生はこの家に来たのは歌の様子を見に来た一度だけだと言ったら、心麦を追い返した。
歌は心麦ではない。津寺井はスマホの歌の写真を見せた。確かににていない。しかし、現状、それが歌であるという証拠は視聴者に提示されていない。非常によそよそしく、これ以上話したくないという態度を露わにしているのもきになる。歌と心麦の関係には、まだなにかありそうな気配を漂わせている。
一方、松風は遠藤友哉と接見。遠藤友哉は弁護士というエリート色の強い職業である松風に対して、あんたの哀れみの詰まった目が嫌いだと言い放つ。ところが、松風は遠藤友哉を羨ましいという。
松風の父・久世は、松風が小学生のころに失踪している、生きているかもわからない、でも、遠藤友哉の父・力郎(酒向芳)は生きていて、無実を証明しようと色々と動いていた。自分にはそこまでできないから羨ましいのだと。そして、松風は力強く「私を信じてください」と告げる。
いよいよ、真相に近づいてきた感がある第6話。松風は遠藤友哉の信頼を勝ち取れるのか、赤沢が遠藤友哉の再逮捕に動いている中、この信頼関係が今後の展開の鍵を握りそうだ。そして、歌である。写真が出てきたが、歌であるという保証はない。ここにはまだなにか秘密がありそうだ。
今回のエピソードは、阿南の過去も印象的だ。母のようにはなるまいと努力して出世したからには、今のポジションを失うわけにはいかない。そんな気持ちが冤罪事件を生み出しているとしたら、切ないものがある。しかし、黒幕はそんな彼女の気持ちをも利用して事件を裏から操っているのだろう。人間の感情と事件の輻輳した絡み合いが上手いドラマだ。
登場人物
山下心麦(広瀬すず)
松風義輝(松山ケンイチ)
波佐見幸信(森崎ウィン)
阿南由紀(瀧内公美)
秋貞隆雄(絃瀬聡一)
赤沢守(野村康太)
ありさ(清乃あさ姫)
西陣誠 (斉藤優)
染田進(酒井敏也)
遠藤友哉 (成田凌)
遠藤力郎(酒向芳)
赤沢 正(藤本隆宏)
赤沢京子(西田尚美)
山下静香(仙道敦子)
木村夏美(原日出子)
山下春生(リリー・フランキー)
神井孝(磯村勇斗)
三木田辰雄(石丸謙二郎)
久世正勝(篠井英介)