NHK放送文化研究所は2023年度のテレビ番組に出演・登場する人物の多様性について調査を行った。 調査は、番組全般の出演者のジェンダーバランスの分析と、夜の全国向けニュース報道番組の登場人物のジェンダーバランス、人種的多様性、障害の有無、取材地の分布などの分析である。
調査の対象とする番組は2021・22年度と同じく,NHKと在京民放5局(日本テレビ,テレビ朝日,TBSテレビ,テレビ 東 京,フジテレビ )の夜9~11時台を中心として放送されている1時間前後のニュース報道番組とした。
調査結果によると、ジェンダーバランスは過去2回の調査とほぼ変わらず、番組全般では女性と男性の割合が4対6、夜のニュース報道番組では3対7であった。 特にニュース報道番組では、女性のレギュラー出演者が初めて男性を上回ったが、年層別に見ると女性は若い年層に集中していた。
ニュースに登場する人物を職業・肩書別に見ると、「政治家」は男性が女性の16倍超、「財界人、企業経営者、役員」では約30倍と偏りが大きかった。 女性が男性より多かったのは「学生、生徒、児童」や「親、家族」であった。
ニュースにおける障害「あり」の登場人物の割合は0.3%で、総人口に占める障害者の割合を大きく下回った。 取材地は東京への一極集中が顕著であり、取材地と人種的多様性を見ても、日本に近いアジア地域や日本に多く暮らすアジア系の人の声よりも欧米の動きやその要人の声が多く反映されていた。
2024年夏に開催されたパリオリンピックでは、ジェンダー平等の理念が高く掲げられ、出場選手枠が男女同数に設定された。 IOCによると、放送の時間帯が偏らないよう、女性と男性の試合を交互に組むなど、競技のスケジュールでもジェンダー平等に配慮した。
国連のSDGsは、ジェンダーのみならず、障害の有無、人種的・民族的背景の違いなどを越え、多様性を尊重し、公平性と包摂性のある社会の実現を求めている。 日本はSDGsの目標全体に関わる包括的な評価では167か国中18位と高い評価を受けたが、ジェンダー平等の目標では「重大な課題がある」と評価された。
NHK放送文化研究所は、2021年からテレビの出演者や登場人物の多様性に関する調査を実施しており、2023年度の調査結果も、テレビが社会の多様性を反映できていないという問題を提起する内容となっている。