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アカデミー賞2025:『Anora』が最多受賞、主演・助演の曖昧化、SNSスキャンダル…今年のオスカーを振り返る


第97回アカデミー賞は、ショーン・ベイカー監督の『Anora アノーラ』が5部門を受賞する結果となった。『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の長編ドキュメンタリー賞受賞などは、意義あるトピックとなったが、問題も噴出したと言える。Varietyが今年のオスカーレースを5つのトピックで振り返っている。

第97回アカデミー賞が開催され、ショーン・ベイカー監督の『Anora』が5冠を達成するなど、波乱含みの授賞式となった。今年のアカデミー賞は、カテゴリー詐称、ソーシャルメディアをめぐるスキャンダル、そしてインディペンデント映画の成功といった要素によって、例年以上に予測不可能なシーズンとなった。
 
主演・助演の線引きが曖昧に

今年の演技部門では、主演級の俳優が助演部門で受賞するなど、カテゴリー詐称がより顕著になった。『エミリア・ペレス』のゾーイ・サルダニャは、実際には主演のカーラ・ソフィア・ガスコンを上回るスクリーンタイムを持ちながら、助演女優賞を獲得した。また、キーラン・カルキン(『A Real Pain』)の出演時間は、表向きの主演であるジェシー・アイゼンバーグとわずか4分差だった。

助演部門での受賞が狙いやすいという戦略からか、マーガレット・クアリー(『The Substance』)は主演候補であったにもかかわらず、助演女優賞に回る可能性もあった。このような状況は、ハリウッドにおいてカテゴリー選定が戦略的に操作されている現実を浮き彫りにした。
 
SNSスキャンダルが影響を与える時代に

Netflixが数百万ドルを投じた『エミリア・ペレス』は、作品賞受賞の有力候補と目されていた。しかし、主演のカーラ・ソフィア・ガスコンの過去のSNS投稿が再浮上し、キャンペーンが停滞。結果的に作品賞受賞には至らなかった。スタジオ関係者によると、今後は俳優や監督のSNS履歴の精査が、賞レースにおいて標準的な慣行となる見込みだ。
 
インディペンデント映画の復権

『Anora』は制作費600万ドル(約7億円)という低予算ながら、作品賞を含む5冠に輝いた。新型コロナウイルスの影響やハリウッドのストライキなど、映画業界は困難な状況にある。しかし、ショーン・ベイカーの成功は、ハリウッドが依然として独立系映画に活路を見出せることを証明した。彼の受賞は、大手スタジオのシステムに依存しない映画作家たちにとって希望の象徴となった。
 
公開時期の戦略が成否を分ける

トロント国際映画祭2023でプレミア上映された『シング・シング』や『His Three Daughters』は、約1年後に一般公開されたが、その間に賞レースでの勢いを失った。一方、過去には『サウンド・オブ・メタル』が公開延期にもかかわらず成功した例もあるが、これはパンデミック期という特殊な状況が後押ししたものだった。映画祭から一般公開までのタイムラグが長すぎると、賞レースにおいて不利に働く可能性が高い。
 
多様性の進展

今年のアカデミー賞では、ドミニカ共和国出身の俳優やブラジルの監督、パレスチナ・イランの映画製作者らが受賞し、多様性の拡大が見られた。ゾーイ・サルダーニャは、ラティーナとして初めて(『ウエスト・サイド物語』のアニタ役を除き)アカデミー賞演技賞を受賞。コルマン・ドミンゴはアフロ・ラティーノとして初の主演男優賞ノミネートを果たした。アカデミー賞は依然として課題を抱えるものの、#OscarsSoWhite と批判された時代からは確実に進歩を遂げている。

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