スタジオジブリが責任編集を務める「宮崎駿イメージボード全集(3)となりのトトロ」が、3月5日に岩波書店から刊行される。
「宮崎駿イメージボード全集」シリーズは、宮崎駿が監督した「風の谷のナウシカ」以降の劇場用映画を完全網羅する。また、スタジオジブリ創設以前にアニメーターとして関わった初期作品も収録予定である。宮崎駿は、映画の世界観を模索し、スタッフと共有するために膨大な量のイメージボードを描いてきた。それらを原画の色彩やタッチを忠実に再現し、高画質で掲載することを目指している。スタジオジブリが所蔵するオリジナルのイメージボードを高精度スキャナーでデジタル化し、未発表作品も含めて収録する。
本書の判型は350ミリ×257ミリと大判で、原画と同じ、あるいはそれに近いサイズで掲載される。ページに収まりきらない場合も視認性を考慮し、縮小しながら掲載する。本書には「となりのトトロ」の屈託のない子供の一瞬や独特のキャラクターを描いたイメージボード全219枚が収録される。
本書の編集を担当した徳木吉春氏は、「写真集のような作りを目指し、編集側の考察を極力排し、画材やサイズの情報のみに留めた」と語る。トリミング処理や背景の削除も行わず、セロテープや画鋲の跡までも残すことで、宮崎駿が実際に描いた姿を伝えることにこだわった。
スタジオジブリ出版部の額田久徳氏は、「イメージボードのオリジナルはしっとりとしていて鮮やか。その魅力を紙で伝えることを重視した」と述べている。また、「宮崎駿の絵は100年後には国宝になってもおかしくないほど価値がある。余計な編集をせず、素晴らしさをそのまま伝えることに注力した」と語った。
印刷を担当するTOPPANクロレの鈴木敬二氏は、「イメージボードの紙の質感や地色までも再現することが今回のコンセプト」とし、マット系の紙を採用。原画と校正刷りを照合しながら品質の維持に努めた。職人も巻ごとに変えず、工場や印刷機も統一することで仕上がりのブレを防ぐなど、細部にまでこだわっている。
「高畑さんは「僕と宮さんで目指したものの頂点だ」と言ったんです」(本書巻末掲載、鈴木敏夫インタビューより)。
宮﨑 駿(みやざき・はやお)
アニメーション映画監督。1941年、東京生まれ。1963年、学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。1985年にスタジオジブリの設立に参加。
代表作は「風の谷のナウシカ」(1984)、「天空の城ラピュタ」(1986)、「となりのトトロ」(1988)、「もののけ姫」(1997)、「千と千尋の神隠し」(2001)、「ハウルの動く城」(2004)、「崖の上のポニョ」(2008)、「風立ちぬ」(2013)、最新監督作は「君たちはどう生きるか」(2023)。
「千と千尋の神隠し」で、第52回ベルリン国際映画祭金熊賞、第75回米アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞を受賞。第62回ベネチア国際映画祭では栄誉金獅子賞を受賞。2012年には文化功労者に選出され、2014年11月、米映画芸術科学アカデミーよりアカデミー名誉賞を受賞している。
2024年3月には、「君たちはどう生きるか」で第96回米アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞を受賞し、21年ぶり2度目の受賞となった。また同年5月には第77回カンヌ国際映画祭で、スタジオジブリとして名誉パルムドールを授与された。さらに9月には、マグサイサイ賞を受賞。2001年に開館した三鷹の森ジブリ美術館では企画原案・プロデュースをし、現在は名誉館主を務めている。