国立映画アーカイブは、映画ポスターを通じて映画の歴史を振り返る展覧会シリーズ「ポスターでみる映画史」の第5弾として、「アニメーション映画の世界」を開催する。本展覧会では、初期のアニメーション作品から現代の新作まで、各国のアニメーション映画の系譜をポスターを中心とした約130点の資料でたどる。
2025年は映画誕生130年の節目にあたる。本展では、映画史の中で独自の発展を遂げたアニメーションに焦点を当て、ハリウッドのカートゥーン映画、ヨーロッパや社会主義諸国のアート・アニメーション、そして日本が誇るアニメーション映画の名作を紹介する。
アニメーション映画は、実写に頼らず、静止画を連続させることで動きを生み出す表現技法であり、映画の誕生とほぼ同時期に登場した。現在では、世界の映像文化を牽引する重要なジャンルの一つとなっている。本展では、映画ポスターを通じて、その発展の過程を視覚的に楽しむことができる。
音楽展示でアニメーション映画の世界を体感
2022年開催の「恐怖映画の世界」展以来、国立映画アーカイブの企画展ではお馴染みとなった音楽展示も用意されている。来場者は、古今東西のアニメーション映画の音楽を聴きながら、視覚だけでなく聴覚でもアニメーション映画の魅力を体験できる。馴染みのある主題歌や劇中音楽を楽しみながら、作品の世界観に没入することができるだろう。
展覧会の構成
本展は、以下の5つの章で構成されている。
第1章:1900s-1910s アニメーション映画の始祖たち映画誕生直後に登場した初期のアニメーション作品と、それを生み出した作家たちを紹介する。J・ステュアート・ブラックトン、エミール・コール、ウィンザー・マッケイらによる作品が焦点となる。
第2章:1920s-1960s ハリウッド製カートゥーンの隆盛ウォルト・ディズニーによる『蒸気船ウィリー』や『白雪姫』をはじめ、フライシャー兄弟の「ベティ・ブープ」や、ハンナ=バーベラの「トムとジェリー」など、アメリカのカートゥーン映画の発展をたどる。
第3章:1930s-1980s ヨーロッパ、社会主義諸国のアート・アニメーションロッテ・ライニガーによる『アクメッド王子の冒険』、チェコのイジー・トルンカやカレル・ゼマンの作品など、アメリカとは異なる美意識と芸術性を持つアニメーション作品を紹介する。
第4章:1930s-1970s 日本のアニメーション映画日本最古のアニメーション映画『なまくら刀』から、大藤信郎、政岡憲三、瀬尾光世らによる作品、そして東映動画の設立と発展を経て、テレビアニメの普及に至るまでの歴史を紐解く。
第5章:1980s-2020s アニメは世界を制すスタジオジブリの躍進、ディズニー・ルネサンス、ピクサーやドリームワークスによるCGアニメーションの台頭など、1980年代以降のアニメーション映画の進化を追う。
トークイベントも開催
展覧会開催中には、専門家によるトークイベントも実施される。
「ハリウッド・カートゥーンのなかのクラシック音楽」(5月31日)講師:藤原征生(国立映画アーカイブ特定研究員)
「企画の見どころと展示品解説」(6月28日)講師:岡田秀則(国立映画アーカイブ主任研究員)
「映画産業におけるアニメーションの歴史」(7月19日)講師:宮本裕子(立教大学准教授)
開催概要
会期:2025年4月8日(火)-7月27日(日)
会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)
開室時間:11:00-18:30(金曜日は20:00まで延長)
休室日:月曜日、7月8日-13日
入場料:一般250円、大学生130円、高校生以下・65歳以上無料
詳細は公式サイトで確認できる。
アニメーション映画の歴史を網羅する本展覧会は、映画ファンならずとも見逃せない内容となるだろう。