アメリカの映画館の観客動員が、コロナ禍前の水準になかなか戻らず、大手チェーンのAMCシアターズも苦境に陥っているようだ。過日、同社のCEOアダム・アロン氏が、映画と配信のウィンドウ戦略の見直しを求める発言をしたとハリウッド・レポーターが報じている。
AMCシアターズ、劇場公開期間の延長を要請
映画館の観客動員が低迷する中、大手シネマチェーンのAMCシアターズが、映画の劇場独占公開期間を最低45日間に戻すよう映画スタジオに求めている。
アカデミー賞授賞式の数日前、AMCエンターテインメントのCEOであるアダム・アロン氏は、2月25日の決算説明会で映画館の観客数が依然として不安定であることを指摘し、劇場公開ウィンドウの短縮を再考する必要があると述べた。
「より長いウィンドウを導入できることを願っている。現在の業界の試みは失敗だったと思う」とアロン氏は発言。パンデミック前の米国では、多くの映画が劇場公開から74〜90日間は家庭での視聴ができなかったことを引き合いに出した。
しかし、アロン氏はAMC自身が2020年夏にユニバーサル・ピクチャーズと合意し、劇場公開ウィンドウを短縮した張本人だ。この合意により、興行収入が5000万ドル以下の映画は17日間、5000万ドルを超える映画は31日間のウィンドウに縮小された。ユニバーサル(親会社はコムキャスト)は以前から20ドル以上の価格でレンタル提供するプレミアムVOD(PVOD)モデルを模索しており、この合意は新たな標準として定着した。
現在、ほとんどのスタジオは40日以上のウィンドウを維持しているが、その長さは映画の興行成績次第となっている。ディズニーは一部の作品を除き、60日間の独占劇場公開を維持している。
アロン氏は決算説明会で「45日間のウィンドウは聖域とすべきだ。17日や30日は短すぎる」と主張し、今後は60日以上のウィンドウの可能性も検討すると述べた。
関係者によると、アロン氏は少なくとも5大スタジオのうち3社と面談しているが、多くのスタジオは従来の慣習に戻ることに消極的だという。しかしアロン氏は依然として交渉を続ける構えだ。「この議論は現在進行中だ。劇場とスタジオの双方が利益を得るためには、最低でも45日間のウィンドウが必要だ」と投資家に語った。