英国インディペンデント映画賞で最優秀共同主演賞をはじめ3部門を受賞した話題作『FEMME フェム』が、3月28日(金)より新宿シネマカリテほか全国でロードショー公開される。サム・H・フリーマンとン・チュンピンが共同監督・脚本を手がけた本作は、2021年に英国アカデミー賞にノミネートされた同名短編を長編映画として大胆に昇華させた作品だ。
本作は、ナイトクラブで観客を魅了するドラァグクイーン、ジュールズの物語だ。ある夜、ステージを終えた彼は、タトゥーだらけの男プレストンと出会う。しかし、その出会いは突然憎悪に満ちた暴力へと変わり、ジュールズの心と体には深い傷が刻まれる。
数カ月後、偶然立ち寄ったゲイサウナでジュールズはプレストンと再会する。ドラァグ姿ではない彼に、プレストンは気づかないまま誘う。かつて憎悪に駆られジュールズを襲った男が、実は自身のセクシュアリティを隠していたことを知ったジュールズは、復讐を果たすため密会の様子を記録しようと計画する。
しかし、密会を重ねるたび、プレストンの暴力的な仮面の奥にある脆さと葛藤が浮かび上がる。プレストンの本質に触れるうち、ジュールズの心にも説明のつかない感情が芽生え始める。待ち受けるのは復讐か、それとも──。
主人公ジュールズを演じるのは、人気ドラマシリーズ「ミスフィッツ─俺たちエスパー!」で知られるネイサン・スチュワート=ジャレット。対するプレストン役には、サム・メンデス監督の『1917 命をかけた伝令』で一躍世界的な注目を集めたジョージ・マッケイが扮する。
監督・脚本を務めたサム・H・フリーマンとン・チュンピンは、本作について「リベンジ・スリラーの中心にクィアの主人公を据えることで、新たな価値観を打ち出したかった」と語る。短編の本作品は、ベルリン国際映画祭で初披露され、観客に衝撃を与えるとともに大きな称賛を集めた。
本作は単なる復讐劇にとどまらず、セクシュアリティ、マスキュリニティ(男らしさ)、家父長制、アイデンティティといったテーマを深く掘り下げる。監督たちは「この映画は『ドラァグ』そのものについての物語だと確信した。それは、主人公ジュールズが纏うフェミニンなドラァグに限らず、本作に登場するすべてのキャラクターが何らかの”ドラァグ”を纏い、それを通じて自らの力や社会的地位を築いている」と説明する。
「人は皆裸で生まれ、それ以外はすべてドラァグ」というル・ポールの言葉に共感した監督たちは、ドラァグを単なる復讐のための変装ではなく、人間が持つさまざまな「演じること」の象徴として機能させている。
『FEMME フェム』は、3月28日より新宿シネマカリテほか全国で公開。配給はクロックワークス。R18+指定作品となる。
公式サイト:FEMME フェム – 株式会社クロックワークス – THE KLOCKWORX
監督・脚本:サム・H・フリーマン、ン・チュンピン
製作:ヘイリー・ウィリアムズ&ディミトリス・ビルビリス
撮影:ジェームズ・ローズ
編集:セリーナ・マッカーサー
プロダクションデザイン:クリストファー・メルグラム
衣装:ブキ・エビエスワ
音楽:アダム・ヤノタ・ブゾウスキ
出演:ネイサン・スチュワート=ジャレット、ジョージ・マッケイ、アーロン・ヘファーナン、
ジョン・マクリー、アシャ・リード
2023年|イギリス|英語|98分|カラー|シネマスコープ|5.1ch|原題:FEMME
字幕翻訳:平井かおり|レイティング:R18+|配給:クロックワークス
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