香港の映画マーケット「フィルマート」と同時期に開催される「香港アジア映画投資フォーラム(HAF)」が、今年で第23回を迎える。3月17日から19日までの3日間にわたり、開発段階の25作品がラインナップされる。
本年度の注目作品には、日本の是枝裕和監督がプロデュースを手掛ける新鋭・山浦未陽の『Yellow』、インドのアディティヤ・ヴィクラム・セーングプタ監督が製作するニラドリ・ムケルジーのデビュー作『Republic of Mahalaxmi Apartment』などが含まれる。
HAFを主催する香港国際映画祭(HKIFF)インダストリー部門のディレクターであるジェイコブ・ウォンによると、今年は45の国と地域から276の開発中プロジェクトが応募された。応募国には香港、タイ、トルコ、カザフスタン、韓国などが含まれる。
ウォンは「香港は東アジアの最南端であり、東南アジアの最北端に位置する。両地域の映画人をつなぐには理想的な場所だ」と語る。「HAFは長年にわたり、地域的かつ国際的なイベントとして機能しており、中国本土の映画関係者にも魅力的だ。ここから生まれた作品が国際映画祭での受賞や興行的成功を収めることも多い」という。
アニメーション市場の拡大を反映した新たな試み
今年のHAFでは、香港国際映画祭のインダストリープログラムの一環として、新たに「アニメーション・イニシアティブ」が設立された。このプログラムでは6つのプロジェクトが紹介されるほか、フィルマートと連携してアジアのアニメーション産業に関する2つのパネルディスカッションが開催される。
「アニメーションは重要な映像コンテンツの一分野として成長を続けており、その発展を見守ることに大きな関心を持っている」とウォンは述べる。主催者によると、アニメーション部門の応募数は前年と比べて60%増加しており、地域における市場の拡大を裏付ける結果となった。
紹介される6つのプロジェクトのうちの1本、『Wildheart』は、フランス・ベルギー・日本の合作のようだ。日本語タイトルは『かなかな蝉』で監督は仲山マルソーという人物で、パリを拠点にしたスタジオ「keytales」が制作する。
上記のトレイラーのスタッフクレジットには、仲山雪という名前もあるので、日本人が関わっているのだろうと思われる。
また、HAFはジャカルタ・フィルム・ウィークとの新たな提携を発表し、インドネシアから2作品がマーケットに出品される。このようなアジア各国の映画イベントとの連携強化は、HKIFFインダストリーの今後の重要な戦略の一つであるという。
香港映画業界の課題と次世代支援の必要性
2024年の香港映画界は明暗が分かれた年となった。『The Last Dance』や『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』が興行収入1億香港ドル(約12.9百万米ドル)を超えるヒットを記録した一方で、年間の総収益は減少し、製作本数も減少傾向にある。
「自分たちの作品が売れないときは、なぜ売れないのかを問い直すべきだ」とウォンは指摘する。「人口750万人の都市で映画産業を持続させるのは容易ではない。しかし、映画文化を育成することは可能だ。ヨーロッパのように政府の補助金によるシネマモデルを参考にするのも一つの方法だろう」
特に、長編デビューを果たした監督が2作目を制作する際の支援が不足している点をウォンは問題視している。例えば、金馬奨で3冠を獲得した『離れていても』のサーシャ・チョク監督は、現在2作目の準備を進めており、資金の大部分は香港からの支援によるものだ。チュク監督は次回作の撮影を香港と深圳で予定している。
「香港政府は新人監督のデビュー作には手厚い支援策を設けているが、2作目以降のサポートは手薄だ」とウォンは語る。「デビュー作を支援することで一定の成果は出ているが、それが2作目、3作目へと続かない現状がある」
HAFは、アジアの映画産業の成長と発展を支える役割を担いながら、特に若手監督への支援を強化する方針を示している。今年の新たな取り組みが、今後の映画産業にどのような影響をもたらすのか注目される。
ソース:Hong Kong Film Fest Industry Director Talks Asian Animation Boom & Support For Sophomore Features