香取慎吾主演のテレビドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第9話は、ネット選挙と報道のあり方をテーマにしていた。随所に近年の選挙で物議を醸したようなネタを参考にしている思われるエピソードだった。
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前回、商店街の再開発問題から大森一平(香取慎吾)は、区議選ではなく、区長選に立候補することを決意、強引に再開発を進めようとする現職の長谷川区長(堺正章)を相手に無所属で戦うと宣言する。
現職区長は4選連続で当選していて地盤が固い。それをなんの後ろ盾もない一平が挑んで勝てるのか。しかも、一平はテレビ局を辞めた理由がパワハラでクビになったのではという噂を広められて、苦境に陥ることになる。
ここでの区長側と一平の戦いは、ネットを通して行われることになる。区長側がパワハラの噂をリークすると、またたく間にSNSでその話題が拡散、尾ヒレがついて相手が自殺したことになってしまう。実際には、その相手のテレビ局時代の後輩は生きていて、暴露系の動画配信者になっているのだが、そういう事実はどうでも良くなってしまっている。人は信じたいものしか信じない、という現実のSNSでもよく見る光景が展開されていき、一平の自宅にはマスメディアとともに配信者が押し寄せ、あることないことを浴びせかけ、その動画がさらに切り取られて、悪評が広まる。
選挙の主戦場はネット。昨今の情勢を踏まえている脚本だと思った。テレビや新聞は、このエピソードでは大した影響力は持っていない。
そして、一平もまた反撃のためにネットを有効活用する。暴露系配信者となっていた元後輩の野上ことのがっちを自宅に呼んで対面、その様子を生配信させるという手段に出る。
野上は、テレビ時代、事件の被害者遺族のコメントを取ることを嫌がっていた。遺族を視聴率のために利用するようなことが正しい報道のあり方なのか、疑問だったのだという。一平はそれでも広く伝えるために遺族の映像は必要というが、テレビ局時代にそうした話し合いの機会を設けることもできずにいたことを謝罪した。
そして、生配信中に長谷川区長のパワハラの録画データを流すという作戦に出る一平。エレベーターが襲いを切れ散らかす区長の姿は、兵庫県知事を参考にしているのでは。秘書になんで前もってエレベーターのボタンを押しておかないんだと理不尽に怒るシーンもあった。
この動画データは一平が撮影しておいたものなのだろか。まさか、真壁(安田顕)が用意したのかなと思ってしまったが、最終話の予告を見る限り、そうではなさそう。
今回のエピソードは動画の威力、ネット世論を大きく動かす動画が選挙において強大な力を持ち始めていることを踏まえた展開となっていた。暴露には暴露で対抗するというのが、いいやり方かと問われれば、そうではないと言いたくなるが、たしかに昨今の選挙はそんな事例が多いことも確かで、現実のリフレクションとしてなかなか優秀なエピソードだったのではないか。
登場人物
大森一平(香取慎吾)
小原正助(志尊淳)
小原ひまり(増田梨沙)
小原朝陽(千葉惣二朗)
今永都(冨永 愛)
黒岩鉄男(橋本じゅん)
長谷川清司郎(堺正章)
真壁考次郎(安田顕)