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ディズニー実写版『白雪姫』レイチェル・ゼグラーの過去発言が波紋を呼ぶ、米国のPR施策に影響か


ウォルト・ディズニー・カンパニーが手掛ける実写映画『白雪姫』が、3月21日の劇場公開を控えている。しかし、同作のアメリカ国内におけるプロモーションはこれまでのディズニー作品とは異なる様相を呈しており、その背景にはPRの失策や文化的な対立が影響していると指摘されている。
 
異例の対応を見せるディズニー

本作は、1937年のディズニーアニメ『白雪姫』の実写リメイクであり、レイチェル・ゼグラーが白雪姫役、ガル・ガドットが邪悪な女王役を演じる。しかし、ゼグラーの過去の発言が物議を醸し、さらに「ウォーク(Woke)」批判を受けるなど、公開前から厳しい目が向けられてきた。

ディズニーは、これに対応する形でワールドプレミアの形式を大幅に変更。3月15日にロサンゼルスで開催されるプレミアは、通常のレッドカーペット形式ではなく、記者による質疑応答を伴わない「祝祭的かつ家族向けのイベント」として実施するという。ガドットとゼグラーが記者の質問に直接答える場面を避けることで、ネガティブな話題が広がるのを防ぐ狙いがあるとみられる。

このような対応は、過去にも例がないわけではない。ワーナー・ブラザースは、『ザ・フラッシュ』のワールドプレミアにおいて、主演のエズラ・ミラーのスキャンダルを考慮し、制限付きのレッドカーペットイベントを実施した。ただし、ミラーの場合は犯罪行為が関与していたのに対し、ゼグラーが問題視されたのは、過去に『白雪姫』のオリジナル版に対する批判的な発言や、パレスチナ支持、ドナルド・トランプ前大統領への批判を行ったことによるものだ。

一方、ガドットはイスラエル出身の女優として、2023年10月7日のハマスによるテロ攻撃以降、イスラエルへの支持を表明しており、その発言がSNS上で物議を醸している。特に、アカデミー賞で彼女がパレスチナ映画『No Other Land』の受賞プレゼンターを拒否したという根拠のない噂が流れ、さらに議論を呼んだ。
 
異例のマーケティング戦略

ロサンゼルス以外のプレミアも従来とは異なる形式となっている。イギリスでのワールドプレミアは実施されず、代わりにゼグラーはスペイン・セゴビアの城でパフォーマンスを行う。この城は、1937年版『白雪姫』の城のモデルとなったとされている。

また、ディズニーは本作のマーケティングを控えめに進めてきた。通常、同社の大作映画では1か月以上前から前売り券の販売を開始するが、本作では公開のわずか2週間前に販売が開始された。この対応について、映画業界関係者は「ディズニーはこの映画を何とか公開さえすればよいと考えているのではないか」と語っている。

ディズニー側はこの見方を否定し、「プロモーションは計画通りに進めている」と主張する。実際、ゼグラーとガドットは3月2日のアカデミー賞授賞式で共演し、その直後から本格的な宣伝活動を開始。ロサンゼルス各地には映画の広告が掲示され、主演陣は『グッド・モーニング・アメリカ』や『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジミー・ファロン』などの主要番組に出演している。また、ゼグラーは日本を訪れ、映画の挿入歌「Waiting on a Wish」を披露し、日本語吹替版で白雪姫役を務める桐生さくらと共演した。

興行収入の予測では、本作は公開初週末に5,000万〜5,600万ドルの興行収入を見込んでいるという。
 
実写版『白雪姫』をめぐる論争

本作をめぐる騒動は2021年のキャスティング発表時から始まっていた。ゼグラーはコロンビア系のルーツを持ち、原作の「雪のように白い肌を持つ白雪姫」という描写とは異なるという理由で批判を受けた。また、7人の小人についても誤った情報が拡散されたが、実際には当初からCGIで描く予定だった。

ゼグラーは過去のインタビューで「オリジナル版の価値観は時代遅れ」「王子が白雪姫をストーカーしているように見える」などと発言し、物議を醸した。さらに、トランプ前大統領の当選時にはSNSで「トランプ支持者もトランプも平穏を知らずに生きるべきではない」と投稿し、後に謝罪している。

ゼグラーとガドットの政治的立場は対極にあるが、結果として両者ともSNSで激しい批判にさらされることとなった。ディズニーがどのようにこの逆風を乗り越え、『白雪姫』を成功へと導くのか、今後の動向が注目される。日本では3月20日から公開となる。

公式サイト:Inside Disney’s ‘Snow White’ Troubles: “They Need to Get This Over With”