映画『No Other Land』が今年のアカデミー賞でドキュメンタリー部門を受賞した。この受賞は、米国の配給会社が関与しない作品としては史上初の快挙となった。
フロント・ロウ・フィルムド・エンターテインメント(Front Row Filmed Entertainment)は、中東および北アフリカ(MENA)地域における『No Other Land』の配給権を取得したとハリウッド・レポーターが報じている。同契約は、フロント・ロウのエリー・トゥーマ氏と、オーストリアの映画販売会社オートルック・フィルムセールス(Autlook Filmsales)のステファニー・フックス氏との交渉を経て締結された。
本作は、パレスチナ人活動家のバセル・アドラ氏とイスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハム氏が共同で監督を務める。映画は、軍事訓練区域として指定されたアドラ氏の故郷の荒廃を描き、彼がその実態を訴える過程を記録する。アブラハム氏の支援を受けた彼の活動は次第に注目を集めていく。
『No Other Land』は2023年のベルリン国際映画祭で初公開され、「パノラマ観客賞」および「ベルリン・ドキュメンタリー賞」を受賞した。公開以来、世界各地の映画祭で68の賞を獲得し、ボストン映画批評家協会賞、ヨーロッパ映画賞、ゴッサム賞などでも評価された。2025年のアカデミー賞では、米国の配給会社を持たないドキュメンタリー作品として初めて、長編ドキュメンタリー賞を受賞する歴史的快挙を成し遂げた。
米国での配給確保には困難が伴ったものの、映画製作者らはシネティック・メディア(Cinetic Media)と提携し、自主配給を決断。2月2日に単独劇場で公開され、初週末で2万6000ドルを記録した。その後も4週間にわたり上映が続き、最終的に120スクリーンへ拡大し、興行収入は120万ドルを超えた。
フロント・ロウは今年初め、Netflixオリジナル作品『The Sand Castle』を配信し、77カ国で2週間にわたりトップ10入りを果たした。また、『The Substance』『The Apprentice』『Emilia Pérez』といった賞レースで注目を集めた作品や、『20 Days in Mariupol』『Holy Spider』『Where Do We Go Now』など、社会的・政治的メッセージを持つ作品の配給も手掛けている。
フロント・ロウのCEO、ジャンルカ・チャクラ氏は次のようにコメントした。
「支配的なナラティブがあふれる現代において、多様な視点に目を向けることが不可欠だ。本作は、正義を追求する映画製作者たちの視点を提供している。映像は衝撃的であり、唯一無二のものだ。我々には、この作品を観客に届ける責任がある。この映画の映像は、真実と抵抗の強力なツールとして機能し、村の歴史を守るものとなる」。
フロント・ロウは、本作を厳選した劇場で上映した後、中東および北アフリカ地域でプレミアムVOD配信を開始する予定だ。