全米の映画館を代表する業界団体である「全米劇場所有者協会(National Association of Theatre Owners、NATO)」が、名称を「シネマ・ユナイテッド(Cinema United)」に変更することを発表したとindiewireが報じている。これは、北大西洋条約機構(NATO)との混同を避けるとともに、業界の変化に対応するためのリブランディングの一環である。
シネマ・ユナイテッドのマイケル・オレアリー会長は12日、AP通信に対し、「組織の再構築が必要であり、ウクライナ情勢に関する問い合わせを受けるのもそろそろ飽きてきた」と語った。オレアリー氏は昨年、前会長のジョン・フィシアン氏の後任として就任している。
新名称とともに、スローガンも「映画鑑賞こそが我々の使命(Moviegoing Is Our Mission)」に変更された。シネマ・ユナイテッドは米国内の32,000スクリーン、さらに世界88カ国で30,000スクリーンを擁する映画館業界の代表団体であり、劇場オーナーだけでなく、その従業員も含めた業界全体を支援する目的で名称変更が行われた。
3月31日からは、映画業界最大のイベント「シネマコン(CinemaCon)」が開催される。毎年ラスベガスで開催されるこのイベントでは、映画スタジオが新作ラインナップを披露し、劇場オーナーに向けて上映作品の魅力をアピールする。今年のシネマコンでは、アカデミー賞で「アノーラ」のショーン・ベイカー監督が訴えた「映画を劇場で上映することの重要性」にも呼応し、映画館の回復に向けた施策が議論される予定だ。
近年、興行成績は伸び悩んでおり、「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」などの大作が期待を下回る成績となる中、2024年の国内興行収入は前年同期比でやや減少している。この状況を打開するため、シネマ・ユナイテッドは2.2億ドルを投じて技術や設備のアップグレードを行うとともに、特定の客層を対象にした割引キャンペーンを実施する予定だ。例えば、家族連れやデートを楽しむカップル向けにコンセッション(飲食売店)の特別割引を実施し、映画館への来場促進を図る。
新たな名称のもと、シネマ・ユナイテッドは映画館文化の発展と観客の回帰を目指し、積極的な活動を続けていく構えだ。