香港で開催されたFILMARTのパネルディスカッションにおいて、インドネシアの映画市場が国内コンテンツや国際共同制作の増加によって活況を呈している一方で、海外配給の課題や映画インセンティブの欠如が依然として問題であることが指摘された。
本パネルには、インドネシアの文化大臣ファドリ・ゾン氏と、在香港インドネシア総領事館の代表団も出席した。
韓国CJ ENMのインドネシア市場進出
韓国のエンターテインメント大手CJ ENMの国際制作部門責任者であるジャスティン・キム氏は、2014年からインドネシア市場での事業拡大に取り組んできた。同社は、釜山国際映画祭のアジアン・プロジェクト・マーケットで「最も期待される作品」に贈られる賞を設立し、その最初の受賞作がジョコ・アンワル監督の『A Copy of My Mind』だった。この作品はヴェネチア、トロント、釜山、ロッテルダムなどの主要映画祭に出品され、CJ ENMにとってインドネシア市場の可能性を確信させる契機となったという。
その後、CJ ENMは『Sweet 20』『Cado Cado: Doctor 101』、さらには韓国映画『怪しい彼女』のインドネシア版リメイクなどの共同制作を進め、ホラー映画『Satan’s Slaves』でも成功を収めた。しかし、インドネシア国内の映画製作本数が多いため、劇場公開の適切なタイミングを見極めることが難しいという課題があるとキム氏は語る。
独立系プロデューサーと映画配給の課題
Mylabの創設者であり、韓国のBarunson E&Aの国際買収アドバイザーであるローナ・ティー氏は、インドネシアにおける独立系プロデューサーの役割が十分に評価されていないと指摘した。
「独立系プロデューサーは映画産業の基盤を築き、新しい才能を育てる重要な役割を担っている。彼らへの支援がなければ、映画産業の将来的な成長は難しくなる」とティー氏は述べた。
また、同氏はインドネシアにおける映画館のスクリーン数が不足している点も指摘した。「映画市場の成長には、多様な作品が上映される環境が必要だ。現在のインドネシアの興行システムでは、初日や二日目の成績が悪い作品はすぐに上映終了となる傾向があり、特に口コミで広がる作品にとっては不利な状況だ」と語る。
政府の支援策と国際共同制作
インドネシア映画プロデューサー協会(APROFI)の会長でありプロデューサーのエドウィン・ナジル氏は、映画産業の発展には政府の支援策、特に税制優遇措置と撮影許可の整備が不可欠であると主張した。
「インドネシアでの撮影を検討する海外の映画関係者から最も多く寄せられる質問は、税制優遇措置と撮影許可についてだ。政府も最適な支援制度を模索しているが、現状では税制優遇やキャッシュバックの導入が困難な状況にある。しかし、たとえ税制優遇がなくても、インドネシアでの撮影はコスト面で魅力的だという点を海外のパートナーに伝えていきたい」と語った。
海外配給の課題と共同制作の可能性
インドネシアのプロデューサーでありKawankawan Mediaの創設者であるユリア・エヴィナ・バハラ氏は、インドネシア映画の最大の課題は海外配給にあると指摘した。
「インドネシア映画は依然として国際的な配給網が脆弱であり、これは市場拡大の大きな障害となっている。しかし、共同制作を行うことで、少なくとも共同制作相手国での配給の機会を得ることができる」とバハラ氏は述べた。
インドネシア映画市場の展望
インドネシアの映画産業は急成長を遂げているものの、国際的な競争力を高めるためには、配給網の拡大や政府の支援策の充実が求められる。パネルディスカッションでは、インドネシア映画のさらなる発展には、独立系プロデューサーの支援、興行システムの改善、税制優遇措置の導入、そして国際共同制作の推進が鍵になるとの見解が示された。
ソース:Indonesia Is Booming With Local Content & International Co-Productions