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『しあわせは食べて寝て待て』第2話レビュー:桜井ユキ、宮沢氷魚、加賀まりこが織りなす「ていねいな暮らし」と人間模様


「ていねいな暮らし」と聞くと、どこかハードルが高いもののように感じてしまう。季節を感じる食卓、美しい器、静かな読書時間——そのどれもが、お金と時間と、心の余裕がなければできないような気がして。NHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』第2話の麦巻さとこ(桜井ユキ)は、そんな「ていねいさ」に、少しずつ、でも確かな歩幅で近づいていく。

【良作の予感】桜井ユキ主演『しあわせは食べて寝て待て』第1話レビュー:病と向き合う女性の静かな再出発 – Film Goes with Net
 

司が薬膳を人に教えない理由は・・・

薬膳を羽白司(宮沢氷魚)から教えてもらいたくて団地への引っ越しを決めたさとこだったが、司には病気については責任が持てないから教えられないとつれない返事をくらった前回。それでも一念発起して自分で勉強を始めたさとこだが、「一人で突っ走ってバカみたい」と落ち込んでしまう。身体の病気を抱えていることは、生活のいたるところで「限界」のラインを引いてくる。たった一言の挨拶でさえ、重たくのしかかる日もある。不調の時にはそれすらおっくうに感じる時がある。

そんなさとこの隣には、美山鈴(加賀まりこ)がいる。やさしく、おやつのサツマイモを持って訪ねてきてくれる、美山。しっとり甘いその味は、さとこの心をすこしほぐす。人との距離感が難しいとき、それでもそばにいてくれる誰かの存在は、まるで体温のように沁みてくる。

さとこは、司が病気の人には薬膳を教えないとしている理由を美山から聞いた。かつて、近所のおばあさんに薬膳のことを教えたら、その人は薬も飲まなくなってしまい、食事改善だけで治すんだと意地になってしまったらしい。そうしたら、おばあさんの家族から文句を言われたのだ。
 

薬膳とお金の問題

でも、なんだかんだ司は薬膳のうんちくを教えてくれる。もしかして、彼は薬膳について語りたくてしょうがないのかもしれない。とうもろこしをおすそ分けしてくれたり、薬膳の知識を少しずつ教えてくれたり。堅苦しくない、けれど確かな思いやりに満ちたその姿は、「ていねいな暮らし」そのものだ。

一方、職場でも変化が訪れる。自作の薬膳弁当をきっかけに、同僚と自然と会話が生まれる。ジャスミン茶の香り、季節の食材、石田三成の豆知識――何気ないやりとりが、さとこの心をあたたかくほどいていく。上司もジャスミン茶を常備したいから経費で落としていいと言ってくれる。薬膳を取り入れたことで人間関係も円滑になり始めている。

それでも、現実は厳しい。週4日勤務、限られた収入、薬膳食材の高さ。数百円の違いに心を揺らすさとこが、「何のために生きてるんだろう」と呟いた時、その重さはとてもリアルだった。けれど、そんなときに誘われたすき焼きの食卓は、まさにご褒美のようだった。

ひとりで食べるご飯も大事。でも、誰かと囲む鍋のぬくもりは、それ以上に心を満たしてくれる。沈黙の中にある安心感。黙々と食べる三人の姿が、どこか美しく、そしてやさしい。

帰り際に司が渡してくれたのは、とうもろこしのヒゲで作るお茶。「薬膳はガチガチにやらなくていい」という言葉には、大事なヒントが詰まっていた。お金がなければ、工夫すればいい。創意と工夫が、日々の暮らしを豊かにする鍵になる。靴下を縫い、お茶を淹れ、小さな工夫を楽しむ日々。それは、「ていねいな暮らし」への別の道かもしれない。

誰かの手を借りてもいい。自分にできることからでいい。そんな当たり前のことを、そっと思い出させてくれる、しっとりとやさしいエピソードだった。

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登場人物
麦巻さとこ(桜井ユキ)
羽白司(宮沢氷魚)
美山鈴(加賀まりこ)
唐圭一郎(福士誠治)
青葉乙女(田畑智子)
マシコヒロキ(中山雄斗)
巴沢(ともえざわ) 千春(奥山 葵)
反橋りく(北乃きい)
八つ頭仁志(西山潤)
高麗なつき(土居志央梨)
目白弓(中山ひなの)
麦巻惠子(朝加真由美)