旧ユーゴスラビアを中心としたバルカン半島各国の音楽家たちで構成されるバルカン室内管弦楽団が、2025年5月に来日公演を実施する。指揮は本楽団の創設者であり音楽監督を務める日本人指揮者・栁澤寿男(やなぎさわ・としお)。今回はクラシックの名曲に加え、映画音楽を主軸とした初のシネマコンサートも予定されており、より幅広い観客に訴求するプログラムとなっている。
戦火を越えて音楽で結ばれたオーケストラ
バルカン室内管弦楽団は、2007年に栁澤の主導により創設された。民族紛争の爪痕が残る旧ユーゴ地域において、音楽を通じた民族共栄を目指すという理念のもと、クロアチア人、ボスニア人、セルビア人など複数民族の音楽家が集まり、活動を継続している。
2009年には、コソボ紛争後初となる民族混成オーケストラによるコンサートを国連機関の協力のもと実現。2010年には国連総会関連イベントに招かれ、各国首脳の前で演奏を行った。以降も欧州各地で公演を行い、音楽による国際交流と平和構築の象徴として高い評価を受けている。
来日10回目の節目に映画音楽コンサートを初開催
バルカン室内管弦楽団は2009年の初来日以来、たびたび日本で公演を行っており、今回で記念すべき10回目の来日となる。特筆すべきは、映画音楽に特化したコンサート『シネマクラシック with バルカン室内管弦楽団』の開催である。
このシネマコンサートは2025年5月22日(木)、東京・大田区民ホールアプリコで開催される。演奏曲には『風と共に去りぬ』の「タラのテーマ」、『アラビアのロレンス』、『マイ・フェア・レディ』など映画黄金期の名曲が並ぶほか、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、ジョン・ウィリアムズによる『E.T.』や『スター・ウォーズ』といった映画音楽史に残る名作が揃う。
さらに、日本の映画音楽として坂本龍一作曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」や久石譲の「海の見える街」(『魔女の宅急便』)も披露予定。多彩なラインナップは映画ファンのみならず、幅広い聴衆を魅了する内容である。
ゲストとして登場するのは、シンガーの大黒摩季。彼女はディズニー映画『美女と野獣』の主題歌や『タイタニック』の「My Heart Will Go On」を歌唱するほか、自身の代表曲「ららら」も披露予定で、オーケストラとの共演による新たな魅力が期待される。
栁澤指揮者「映画音楽は言葉と国境を越える」
指揮を務める栁澤は「クラシック音楽に対して敷居が高いと感じている人にも、映画音楽を通じてオーケストラの魅力を伝えたい」と語る。「映画は言語や国境を越えて人々の心を動かすもの。バルカン室内管弦楽団の活動理念とも重なる」と述べ、今回の新企画に強い意欲を見せている。
大黒摩季との共演についても、「以前、映画音楽のステージで共演した際に会場を沸かせた。バルカン室内管弦楽団との初コラボは見逃せない」とコメントしており、音楽の力で会場がひとつになる瞬間を楽しみにしているという。
公演日程(抜粋)
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5月15日(木)19:00 開演
『バルカン室内管弦楽団東京公演2025 -World Peace Concert 2025』
杉並公会堂
曲目:サン=サーンス「ピアノ協奏曲第5番《エジプト風》」、ベートーヴェン「交響曲第5番《運命》」 ほか -
5月16日(金)19:00 開演
鎌倉芸術館
指揮:栁澤寿男、ゲスト:立川志の輔、フルート:藤井隆太 -
5月21日(水)19:30 開演
めぐろパーシモンホール
曲目:R.シュトラウス「アルプス交響曲」、ベチリ「スピリット・オブ・トラディション」 -
5月22日(木)19:00 開演
『シネマクラシック with バルカン室内管弦楽団』
大田区民ホールアプリコ
ゲスト:大黒摩季
※公演内容は都合により変更となる可能性がある。詳細および最新情報は公式チケットサイト「teket」等で随時確認されたい。