TOPPANホールディングス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長CEO:麿秀晴)が運営する印刷博物館において、2025年4月1日付で小説家の京極夏彦氏が新館長に就任した。
印刷博物館は、旧・凸版印刷の創立100周年記念事業の一環として2000年10月に開館した施設で、日本初の本格的な印刷専門博物館である。年間約3万人が来館し、印刷の技術や文化的価値を多角的に発信し続けている。館内には印刷工房も併設されており、教育活動や企画展を通じて、印刷が果たしてきた社会的・文化的役割を伝えてきた。
京極氏は1994年に『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。以降、『魍魎の匣』などの作品で日本推理作家協会賞や直木賞、山本周五郎賞など多数の文学賞を受賞してきた。小説家としての活動にとどまらず、意匠家として造本装丁や印刷に対する深い知見を持ち、作品の装丁やフォント、版組みにも強いこだわりを持つことで知られる。
印刷博物館では、これまでにもグラフィックデザイン界の重鎮・粟津潔氏や、西洋文化史研究の第一人者である樺山紘一氏が館長を務め、学術的・文化的な視点から印刷の価値を掘り下げてきた。
今回の京極氏の就任により、同氏の創作活動と印刷へのこだわりが、博物館の持つ膨大な印刷関連コレクションと融合することで、博物館の新たな魅力創出が期待されている。TOPPANホールディングスは今後、「印刷文化学」の体系化と発信をさらに強化し、印刷が持つ社会的価値の再発見と未来への継承に注力する方針である。
就任に際し、京極氏は「印刷が文化や社会を変革したことへの敬意を胸に、その歴史と意義を伝える博物館の使命を重く受け止めている」と述べ、来館者への期待と決意を語った。
【新館長プロフィール】
京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年生まれ。1994年に『姑獲鳥の夏』で作家デビュー。『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞を受賞。直木賞、柴田錬三郎賞、山本周五郎賞など受賞多数。日本推理作家協会監事。世界妖怪協会・お化け友の会代表代行も務める。