――日本アニメの軌跡を描いた“長編映画のようなマンガ”、バンド・デシネで初の快挙――
2025年4月23日、第29回手塚治虫文化賞(主催:朝日新聞社)の受賞作が発表され、アニメーション監督・りんたろうの自伝的作品『1秒24コマのぼくの人生』(河出書房新社刊)がマンガ大賞に選ばれた。本作はフランスの出版社KANAより刊行された「バンド・デシネ」の日本語版であり、同賞初となるバンド・デシネ作品の受賞となる。
本書は『銀河鉄道999』『幻魔大戦』『メトロポリス』などを手がけた巨匠・りんたろうが、自身の半生を描いた初のマンガ作品である。原題『MA VIE EN 24 IMAGES PAR SECONDE』として2024年にフランスで発表されるや、映画的な構成と美麗な描線によって高い評価を獲得。日本語版においても、書き文字のオノマトペまで著者自らが丁寧に翻訳・修正し、日本の読者に向けた完成度の高い一冊に仕上がっている。
手塚治虫文化賞は1997年に創設され、毎年優れたマンガ作品や功労者を表彰している。今回の受賞に際して、選考委員の中条省平氏は「バンド・デシネの技法を完璧に自分のものにしている」と高く評価。秋本治氏も「手塚先生の功績が色濃く出ている」と、手塚イズムの継承者としての側面に言及している(『朝日新聞』2025年4月23日朝刊)。
『1秒24コマのぼくの人生』は、1941年東京生まれのりんたろうが、疎開、終戦、映画との出会い、アニメーションへの傾倒、そして『鉄腕アトム』への参加を経て『銀河鉄道999』に至るまでを綴った回顧録である。描かれるのは、昭和から平成、そして令和へと続く日本アニメの歴史でもある。

映像作家・大友克洋は「昭和無頼な先輩たちに感謝したいと思った」とコメントし、本作を“日本アニメ史の一端を包含する書”と評する声も多い。フランス語圏では“映画のようなマンガ”として好評を博し、マンガとバンド・デシネの垣根を越えた表現が高く評価された。
劇場長編『銀河鉄道999』(1979年)、『幻魔大戦』(1983年)、『メトロポリス』(2001年)など、りんたろうが手がけた作品は日本のアニメーション映画の水準を押し上げ、国際的な評価も獲得してきた。その集大成が『1秒24コマのぼくの人生』であり、映像文化への情熱が一コマ一コマに込められている。
本作はA4判変形・上製本で全256ページ。税込3,520円にて河出書房新社より発売中。電子書籍版も各ストアで配信されている。
作品情報
書名:1秒24コマのぼくの人生
著者:りんたろう
仕様:A4判変形/上製/256ページ
発売日:2024年12月2日
定価:3,520円(税込)
ISBN:978-4-309-25784-6
発行元:河出書房新社