『PJ ~航空救難団~』は、航空自衛隊の小牧基地を舞台に繰り広げられる、一風変わった鬼教官と訓練生たちの熱い物語だ。「人命救助最後の砦」と言われる「パラレスキュージャンパー」を育成する救難教育隊の主任教官を主人公に内野聖陽が扮している。
風変わりな教官と7人の訓練生たち
物語は、2013年12月22日、雪山での遭難救助から始まる。航空救難団の宇佐美誠司(内野聖陽)が、悪天候の中、ヘリからロープで降下し、親子を救うシーンである。暗闇の中、宇佐美の姿はまさに「天使」のように少年には映った。
時は流れ、2025年4月。若き訓練生・沢井仁(神尾楓珠)が小牧基地へと旅立つ朝、家族に見送られながら「行ってくるわ」と覚悟を決める姿に、青年の決意がにじむ。航空救難団を目指す新たな65期生の物語が、ここから動き出す。
小牧基地では、教官の堀越正一(宍戸開)の訓示の最中、ヘリから宇佐美が「俺達は天使だ!」と叫びながら降下。破天荒かつ熱血な主任教官として登場する。宇佐美曰く、「人命救助最後の砦」が航空救難団であり、だからこそ訓練は過酷を極める。平年でも6割しか突破できない狭き門だという。訓練は初日から壮絶だ。中腰姿勢での耐久、ホースでの冷水攻撃など、理不尽にも思える鍛錬にさらされる新人たち。しかし宇佐美は言う、「大自然はもっと理不尽だ」と。合理性を超えた現実があることを突きつける。
この過酷な訓練シーンを神尾楓珠や石井杏奈、草間リチャード敬太(Aぇ! group)らが身体を張って演じている。なかなか過酷な撮影現場に見える。
65期生の中には、航空救難団初の女性合格者・藤木さやか(石井杏奈)もいる。宇佐美は彼女に「よくやった」と讃えるが、女性ということでの特別扱いは一切しない。新入生たちは夜、互いに声をかけ合い、全員合格を誓う。
自分だけが遭難に助かった沢井の悔恨
宇佐美もまた、過去の失敗に囚われている様子が描かれる。助けられなかった上杉という名の男性、深夜にウェイトトレーニングに励む姿に、その悔恨がにじむ。一方、沢井も過去の遭難で父だけを救えなかったことに傷を負っていた。
早朝、再び始まる過酷な訓練。宇佐美は「太陽こそ最高の栄養素」と言い、全身で浴びろと叫ぶ。垂直に近い壁からの降下訓練では、訓練生の長谷部達也(渡辺碧斗)が高所恐怖症を露呈。訓練生たちは戸惑いながらも必死に食らいついていく。
次なる課題は、トイレ掃除。「自分のためでなく、誰かのために働くこと」を学ばせるためだ。そんな折、岐阜県知事から派遣要請が入り、教官たちは現場に出る。教育隊も出動要請があれば現場に出るのだ。
宇佐美の娘・乃木勇菜(吉川愛)は、テレビで救助活動を見るも、「家族を放って他人を助けるなんて」と複雑な思いを抱く。彼女の母であり、宇佐美の元妻・乃木真子(鈴木京香)も、宇佐美のことを気にかけている。
家族と救難員というテーマは、切実なものだ。危険と隣合わせの仕事に就く人の覚悟は素晴らしいが、待っている家族は複雑な気持ちだろう。訓練生の東海林勇気(犬飼貴丈)にも妻子がいる。
沢井は宇佐美に任務の成果を尋ね、「救助は成功だった」と返されるが、「死ぬ覚悟はある」という沢井に対し、宇佐美は「それは覚悟とは言わない」と一喝する。どうも、沢井は死に急いでいるように思える言動が多い。
一方、勇菜は宇佐美に連絡を取り、卒論の題材として航空救難団を選んだと語る。父との再接近の兆しが描かれる。
降下訓練では、藤木が失敗し、落下寸前の危機に。沢井は父の死を思い出し、トラウマを刺激される。宇佐美自身も足に不安を抱えており、過去の現場で負傷した可能性が示唆される。
やがて、宇佐美は沢井に「自分の命ばかり気にする者に他人は救えない」と激しく叱責。ハシゴ登りの勝負を挑み、「負けたらクビ」と言い放つ。沢井は何度挑んでも勝てず、ついに敗北を認める。
その後、宇佐美は「お前の中の本当のお前はなんと言っている?」と問いかける。沢井は涙ながらに語る。父の死は自分のせい、自分には幸せになる資格がない——だから救難員として命を賭けると。それを聞いた宇佐美は、「それは自分を救いたいだけだ」と厳しくも真摯に返し、沢井を抱きしめる。
「お前の父親は、お前が幸せになってはいけないなんて思ってない。命を無駄にするな」と、宇佐美は熱く語る。沢井はようやく、自分を救ってくれた救難員のように、人を救う存在になりたいと本音を吐露する。
夜明け前、AM4:50。65期生たちは再び訓練に向かう。沢井もまた、前向きな表情で、自らの足でその一歩を踏み出した。
航空自衛隊も撮影に協力
本作の撮影は、実際の航空自衛隊小牧基地で行われている。その他、シーンによっては入間基地なんかも使っているらしい。それ故、背景に映る建物もヘリも本物のようだ。迫真のリアリティがあって、日本のドラマとしては珍しい本格派の映像だ。冒頭の雪山での遭難シーンも実際に雪山で撮影をしているらしい。
物語は、熱血教師と生徒たちの熱い絆という体裁の内容で、激しい学園ドラマとも言える雰囲気がある。しかし、断崖絶壁の壁の降下訓練などのシーンもかなり本格的に撮影していて、見応えがある。
キャラクターも個性が明快で、今度7人の訓練生一人ずつ掘り下げていくのだと思われる。特に、石井杏奈演じる藤木はどうして航空救難団を志望したのか気になる。今後の展開も楽しみだ。
登場人物
宇佐美誠司(内野聖陽)
沢井仁(神尾楓珠)
藤木さやか(石井杏奈)
白河智樹(前田拳太郎)
長谷部達也(渡辺碧斗)
西谷ランディー(草間リチャード敬太(Aぇ! group))
東海林勇気(犬飼貴丈)
近藤守(前田旺志郎)
乃木勇菜(吉川愛)
上杉幸三(和田正人)
沢井瑞枝(奥貫薫)
仁科芽衣(黒川智花)
大山順一(眞島秀和)
滝岡賢(長谷川朝晴)
中林誠(高岸宏行(ティモンディ))
森野明里(野村麻純)
堀越正一(宍戸開)
仁科蓮(濱田岳)
乃木真子(鈴木京香)