――“味”と“記憶”が紡ぐ、切なく温かなエッセイ集
株式会社主婦と生活社(東京都中央区)は、作家・燃え殻による初の長編エッセイ集『この味もまたいつか恋しくなる』を2025年4月25日に刊行する。映像化や舞台化が相次ぐ人気作家による待望の書き下ろし作品であり、食の記憶を通じて人との関係を描くエッセイ集となっている。
燃え殻氏は、2017年に発表したデビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』がNetflixで映画化され話題となり、以降も『すべて忘れてしまうから』がドラマ化されるなど映像界でも注目を集めている。本書は、雑誌『週刊女性』で約1年にわたり連載されていた同名のエッセイに加筆修正と書き下ろしを加えた一冊である。
本書のテーマは、「恋しくなる味」。それは必ずしも高級な料理ではなく、缶詰やアイス、インスタントラーメン、駄菓子といった日常にある素朴な食べ物かもしれない。何気なく口にした料理が、過去の記憶を呼び起こし、あの日・あの人を思い出させる。そうした“味の記憶”と、それにまつわる人との物語が、エッセイとして綴られている。
作中には、さまざまな「思い出の味」が登場する。複雑な関係の彼女との別れに添えられたシーフードドリアと白ワイン。電話越しで食べたジャンボモナカと交わされた後悔の言葉。「シェフの気まぐれサラダ」を頼めなかった女性と選んだ人生。冷めたピザトーストを手に初めて見た母の涙など、それぞれのエピソードはまるで短編小説のような趣を持つ。
また、母親の働く背中を思い出させるミートソース缶、祖母の面影を残す干物、父の不器用な愛情が詰まったチャーハンなど、家族や身近な人々との記憶も、食を通して鮮やかに描かれている。
書籍の装丁にもこだわりがある。チョコレートの包装紙をイメージしたカバーは、4パターンの異なるデザインがランダムに展開されており、購入者が好みに応じて選ぶことができる仕組みとなっている。
帯の推薦文は放送作家の鈴木おさむ氏が担当。「しんどくなるけど、また食したくなる」と語るように、本書がもたらす読後感は切なさと中毒性を兼ね備えている。
さらに、刊行を記念し、作家・阿川佐和子氏、BE:FIRSTのLEO氏、映画監督・今泉力哉氏、俳優で作家の戌井昭人氏との特別対談企画も「週刊女性」誌上で順次掲載予定である。
食べ物を通じて思い出と向き合う本書は、「小説みたいに読めて、泣ける」と話題を呼んでおり、幅広い層に響く一冊となりそうだ。
■書籍情報
タイトル:『この味もまたいつか恋しくなる』
著者:燃え殻
定価:1,870円(税込)
発行:株式会社主婦と生活社