韓国ドラマ『Sライン』のアン・ジュヨン監督が、カンヌ国際シリーズフェスティバル(Canneseries)出品を機に、コロナ禍以降の韓国テレビ業界の急速な変化と、自身の作品に込めたテーマについて語った。
アン監督は米Deadlineのインタビューに応じ、世界的なKドラマブームについて次のように述べた。「市場の変化は本当に目まぐるしい。パンデミック以降、韓国ドラマは国際的に供給過多とも言える状況にあるが、それでも需要は根強い。一部の作品は一度姿を消してから再び脚光を浴びることもあり、2~3カ月単位で状況が変わるため、次に何が来るのか予測が非常に難しい」。
現在、Netflixは韓国コンテンツへの巨額投資を行い、米国作品に次ぐボリュームを抱えている。ディズニープラスやパラマウントプラスといった海外勢も韓国市場への参入を進める一方、TVINGなどの国内サービスも需要をさらに後押ししている。CJ ENMをはじめとする配信会社は、韓国コンテンツの海外展開にも成功している。
アン監督は、フランス・カンヌにて、自身が手がけた新作ドラマ『Sライン』のプロモーションに参加。ベルギーの『End Game』やアイスランドの『Reykjavik Fusion』などと並び、カンヌシリーズのコンペティション部門に選出された。同作は、イ・スヒョク、アリン、イ・ウンセム、ナム・ギュヒといった俳優陣が出演し、現地で世界初公開を迎えた。
『Sライン』は、生まれつき「性的パートナー同士を結ぶ赤い線」が見える女性ヒョヌプ(アリン)が、同じ能力を与える眼鏡の開発により社会が混乱する中、刑事と手を組んで事件の解明に挑む物語である。
アン監督は「人間社会の境界が侵されるとどう崩壊するかが主題だ」と説明。原作ウェブトゥーンを基にしつつも、ドラマ版では大幅に設定を改変している点を明かした。
また、性に対する羞恥心やテクノロジー、監視社会といったデリケートなテーマを扱ったことについて、当初は「東洋は伝統的に性的に保守的」であるため、西洋の観客に理解されるか不安だったと述懐。しかし「テーマが斬新でオリジナルであると受け止めてもらえた。重要なのは、共通の関心を引き出せるかどうかだ」と語った。
アン監督は今後について「メロドラマとファンタジーを融合させた作品に取り組んでいる」とし、「クリーチャーやヴァンパイアを題材に、人間性を浮き彫りにするような、よりジャンル色の強いストーリーを描きたい」と意欲を見せた。
ソース:‘S Line’ Director On Canneseries Drama ‘S Line’ & Future Of Korean TV