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マーベル映画『サンダーボルツ*』監督が語る“恥の部屋”とうつの物語──シュライヤー監督は「ただの変わり者映画にはしたくなかった」


2025年5月に公開されたマーベル・スタジオ最新作『サンダーボルツ*(Thunderbolts*)』が、従来のMCU作品とは一線を画す心理描写と実験的な映像演出で話題を集めている。本作のメガホンを取ったジェイク・シュライヤー監督が、映画に込めた意図と舞台裏を米Variety誌のインタビューで明かした。(ネタバレあり)

■“恥の部屋”で描くヒーローたちの内面世界

『サンダーボルツ*』のクライマックスでは、ルイス・プルマン演じる超人センチリー(ボブ・レイノルズ)に触れた登場人物たちが、それぞれの過去の「最も恥ずかしい記憶」に閉じ込められる描写が展開される。これらの“恥の部屋”こそ、本作の核心的なモチーフである。

シュライヤー監督は、「これまでのマーベル映画とは異なる、内面を旅するような構造にしたかった。制作総指揮のケヴィン・ファイギからも“違うものを作れ”という後押しがあった」と語る。

監督と撮影監督アンドリュー・ドロズ・パレルモは、A24映画や『マルコヴィッチの穴』『エターナル・サンシャイン』を彷彿とさせる手持ちカメラと実景を活用したアナログ演出に挑戦。CG依存から離れた手法で、トラウマや自己否定に苦しむキャラクターの内面を可視化した。

■“心の闇”を抱えるセンチリーと、マーベル映画におけるうつの描写

センチリーとその内なる敵“ヴォイド”の設定は、もともと脚本段階から組み込まれていた。シュライヤー監督は「キャラクターの原案者であるポール・ジェンキンスとも話をしたが、センチリーという存在は最初からメンタルヘルスの寓話だった」と述べる。

「現代の若い男性が直面する孤独や自己否定といった感情が、無意識のうちに作品に重なった。特定のメッセージを押し付けたかったわけではないが、観る人が“自分が理解されている”と感じてくれたらうれしい」とも語った。

主人公ボブのモデルは、シュライヤー監督の実際の友人だという。「彼は常に極端なハイテンションと自己破壊的な傾向の間で揺れていた。彼が“普通であること”に満足する過程を、ボブの物語に重ねた」と明かしている。

■“採用されなかった”恥の部屋たち──アレクセイやゴーストの内面も構想されていた

本編では、エレーナ(フローレンス・ピュー)、ジョン・ウォーカー(ワイアット・ラッセル)、ヴァレンティーナ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)の“恥の部屋”が描かれたが、実はアレクセイ(デヴィッド・ハーバー)やゴースト(ハンナ・ジョン=カーメン)、バッキー(セバスチャン・スタン)の部屋も検討されていた。

「アレクセイはグラグ(強制収容所)、ゴーストは孤児院での疎外体験、バッキーは少年時代の恥ずかしい出来事──そんな構想もあり、全キャラの“内なる地獄”を旅するフィナーレもアニマティクで描いていた」とシュライヤー監督。

しかし、脚本家ジョアンナ・カーロの提案により、ボブに焦点を絞ったほうが物語としての芯が通ると判断し、採用は見送られたという。

■エンドクレジットシーンと『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』への接続

話題となっているエンドクレジットシーンは、4週間前に『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』のセットで撮影されたもので、シュライヤー監督自身は監督していない。「ルッソ兄弟が手がけたが、現場に立ち会えて光栄だった」と振り返る。

また、同シーンで描かれる“アベンジャーズ”という名称の使用に対するサム・ウィルソンの反応についても、「登場人物たちの立ち位置を大切にしながら、次のスケールへの橋渡しができた」と述べた。

■マーベル映画の「夏の顔」としての意義

もともとは夏公開予定ではなかった『サンダーボルツ*』が、MCUの“夏のキックオフ”作品となったことについて、シュライヤー監督は次のように語った。

「これは“変わり者の映画”ではない。アクション、爆発、ユーモアなど、夏のマーベル作品に期待される要素はすべてある。そのうえで、内面の旅を描くという別の道を通って、マーベル映画の遺産にふさわしい場所にたどり着く──それが目指した着地点だった」

『サンダーボルツ*』は5月2日から全国の映画館で公開中。

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