俳優ポール・メスカルとジョシュ・オコナーが主演する映画『ザ・ヒストリー・オブ・サウンド(The History of Sound)』が、2025年5月21日に開催された第78回カンヌ国際映画祭で公式上映され、観客から6分間に及ぶスタンディングオベーションを受けた。
本作は、オリヴァー・ハーマナス監督が手掛けた長編映画第6作。ベン・シャタックによる同名短編小説を原作とし、1919年の夏、フォークソングを録音する旅に出た2人の青年の関係を描いた感動のロマンスである。メスカルとオコナーが演じる主人公たちは、時代背景と個人の感情の狭間で揺れ動きながら、旅の中で深く結びついていく。
上映当日、オコナーはスティーヴン・スピルバーグ監督の新作撮影のため現地入りできなかったが、会場にはメスカルが登場。上映前からファンの歓声が飛び交い、作品終了後には涙を浮かべる観客が続出した。フォーク音楽のアカペラ演奏が印象的な劇中のシーンには、上映後も余韻が残り、男性用トイレではタキシード姿の来場者たちが鼻歌を口ずさむ場面も見られた。
監督のハーマナスは「これまでの短いキャリアの中でも、もっとも素晴らしい創作の時間だった。すべてはポール・メスカルの才能のおかげである」と称賛の言葉を述べている。
プレミアには、メスカルの交際相手であるシンガー・グレイシー・エイブラムスや、女優のミシェル・ロドリゲス、カーラ・デルヴィーニュ、ジョン・C・ライリー、脚本家ベン・シャタックの妻であるジェニー・スレイトらも出席し、華やかな会場となった。
『ザ・ヒストリー・オブ・サウンド』には、メスカルとオコナーに加え、クリス・クーパー、モリー・プライス、ラファエル・スバージ、ハドリー・ロビンソン、エマ・キャニング、ブリアナ・ミドルトン、ゲイリー・レイモンドらが出演。ハーマナス監督にとっては、2011年の『Beauty』以来のカンヌコンペティション部門出品作である。
メスカルは、ドラマ『ノーマル・ピープル』でのブレイク以降、映画『グラディエーターII』やサム・メンデス監督によるビートルズ伝記映画でのポール・マッカートニー役など、注目作への出演が続いている。本作での演技は、2022年の『アフターサン』でアカデミー主演男優賞にノミネートされた彼のキャリアに新たな1ページを加えることになるだろう。
本作は現在、映画祭を起点に世界各地での公開を視野に入れており、今後の配給情報にも注目が集まっている。