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「ANORA アノーラ」アカデミー賞最多5部門受賞監督の長編デビュー作含む日本初公開4作品
映画監督ショーン・ベイカーの初期作品を一挙上映する「ショーン・ベイカー 初期傑作選」が7月4日からYEBISU GARDEN CINEMAで開催される。「ANORA アノーラ」(2024)で第77回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、第97回アカデミー賞作品賞を含む最多5部門を制覇した注目の映画監督の軌跡を辿る貴重な上映企画である。
インディペンデント映画界の革新者ショーン・ベイカー監督
ショーン・ベイカー監督は、インディペンデント映画の無限の可能性を世界に示し続けてきた現代映画界の重要な作家である。iPhoneでの全編撮影という革新的な手法で話題を呼んだ「タンジェリン」(2015)、貧困層の日常を6歳の少女の視点から描いた「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017)、元ポルノスターの再起を追った「レッド・ロケット」(2021)など、一貫して社会の周縁に生きる人々に光を当てた作品を制作してきた。
ベイカー監督の作風は、ケン・ローチやダルデンヌ兄弟といった社会派リアリズムの巨匠たちから大きな影響を受けている。偏見や差別にさらされる立場にある人々を内側からありのままに描き出す独自のスタイルを確立し、移民、セクシュアルマイノリティ、セックスワーカーなどの人々の境遇と暮らしに正面から向き合いながら、常にユーモアを忘れないその姿勢は初期作品から一貫している。
上映作品詳細:日本初公開の貴重な4作品
今回の特集では、長編デビュー作「フォー・レター・ワーズ」から現在に至るまでのベイカー監督の歩みを辿る、日本初公開の4作品が上映される。
「フォー・レター・ワーズ」(2000年、82分)
ショーン・ベイカー監督の長編デビュー作。真夏の夜のパーティーで酔っ払い、戯れ、いさかいを起こす若者たちを描いた青春映画。アメリカ郊外に暮らす男子大学生の間で交わされる生々しい会話を通して、リチャード・リンクレイター作品を彷彿とさせる青春のポートレートにベイカー監督の鋭い観察眼が光る作品である。
「テイクアウト」(2004年、87分)
密入国業者への多額の借金を抱えながら、ニューヨークの中華料理屋で配達員として働く不法移民の青年の1日を捉えた長編第2作目。徹底した社会派リアリズムのスタイルで、マンハッタンに暮らす移民たちの厳しい現実を浮き彫りにした作品である。
「プリンス・オブ・ブロードウェイ」(2008年、100分)
ニューヨークのストリートで偽ブランド品を売って生計を立てるラッキーの元に、かつての恋人が存在すら知らない息子を連れてきたことで人生が一変する物語。いきなり父親になった黒人青年と幼い子供、それを取り巻く人間模様をチャーミングに描いた作品である。
「スターレット」(2012年、103分)
女優志望のジェーンが愛犬のチワワと共に過ごす日常を描いた作品。ガレージセールで購入したポットに大金が入っていることに気づいたジェーンと、ポットの持ち主である老婦人との心の交流を生き生きと描くユーモラスな感動作。過去に「チワワは見ていた」のタイトルでソフト化されている。
上映詳細
開催期間: 2025年7月4日より
上映劇場: YEBISU GARDEN CINEMA(全国順次公開)
この特集上映は、パルムドール受賞とアカデミー賞最多5部門受賞で世界的注目を集めるショーン・ベイカー監督の原点を知る貴重な機会となる。