中国の映像作家・ビー・ガン監督、最新作『Resurrection』でカンヌ映画祭特別賞を受賞

杉本穂高 2025年6月14日

35歳の鬼才が放つ、映画の神秘性への魅惑的なオマージュ作品

2025年6月14日 – 中国の気鋭映像作家・ビー・ガン監督（35）の最新作『Resurrection（復活）』が、第78回カンヌ映画祭で特別賞を受賞した。同作品は今年後半に米国と中国で劇場公開される予定だ。

『Resurrection』は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、そして心という六つの感覚をテーマにした章立て構成の野心的な作品だ。「ファントム」と呼ばれる霊的存在が、サイレント映画からフィルム・ノワール、現代に至るまで様々な映画スタイルを横断しながら時空を旅する物語を描いている。

主演はジャクソン・イーとスー・チーが務める。ビー・ガン監督は本作について「観客に慰めを与えたい。それがシンプルな願い」と語っている。

カンヌ映画祭では、ジュリエット・ビノシュが審査委員長を務める審査員から特別賞が授与された。北米配給権はJanus Filmsが獲得し、年内の劇場公開を予定している。

ハリウッド・リポーターの批評家は「映画芸術の過去、現在、そして可能性のある未来を振り返り、多くの人がその死を信じている瞬間に、毕赣は愛する映画を蘇らせ、再び葬り去る時空を超えたジャンル横断的な大スクリーンへの讃美歌を作り上げた」と絶賛している。

ビー・ガン監督は2015年のデビュー作『凱里ブルース』で国際的なアートシネマ界における独特な声として注目を集めた。2018年の『ロングデイズ・ジャーニー　この夜の涯てへ』では、3Dによる1時間のワンカット撮影という革新的な手法で世界中の観客を魅了した。

監督は自身の創作過程について「私はイメージで書く。各章を異なる映画時代のスタイルで撮影することで、ファントムが時間を旅する物語を表現した」と説明している。

『Resurrection』は中国の重慶で撮影された。監督の故郷である凱里に似た雰囲気を持ちながら、より多様な撮影の可能性を提供する場所として選ばれた。

特に注目すべきは、最終章で使用されたワックス製の映画館セットである。ビー・ガン監督は「ワックスは映画全体を通じて重要なモチーフとなっている。ファントムは燃えるろうそくのような存在であり、ワックスが適切な素材だと感じた」と述べている。

7年ぶりの新作となった『Resurrection』について、監督は「世界が変化する中で、今こそこの映画を作る必要があると感じた。観客に慰めを与えることができればと願っている」と制作の動機を語った。

同作品は映画の過去と現在、そして未来への深い瞑想であり、現代中国の物質的豊かさと decay（衰退）の美学を独特の映像言語で表現した作品として期待される。