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公取委、小学館と光文社にフリーランス取引適正化法違反で勧告 – 出版業界初の是正措置


公正取引委員会は2025年6月17日、出版社である小学館(東京都千代田区)と光文社(東京都文京区)に対し、フリーランス取引適正化法(以下、本法)に違反したとして、再発防止を求める勧告を行った。これは、昨年11月に本法が施行されて以来、初の勧告措置となる。出版業界におけるフリーランスとの取引慣行に対し、公取委が本格的な是正を求める姿勢を示した格好だ。

出版2社、フリーランスへの取引条件未提示と報酬未払いが判明

公取委の発表によると、小学館および光文社は、週刊誌や月刊誌の製作業務に携わるライターらフリーランス計222名(小学館191名、光文社31名)に対し、業務内容や報酬の支払期日といった取引条件を明示していなかった。さらに、一部では報酬の支払期日を過ぎても支払いが滞るケースがあったという。

本法では、発注者に対し、発注内容や報酬額、支払期日などを書面またはメールで明確に提示する義務が課せられている。また、委託業務の受領から60日以内の報酬支払いも義務付けられている。今回の勧告は、これらの義務に違反したと判断されたものである。

出版業界に根強く残る「支払慣行」に公取委が警鐘

今回の違反の背景には、出版業界に長年根付いてきたとされる「支払慣行」がある。公取委は、支払期日を明示せず、出版物の発売日を基準に支払うといった慣習が依然として残っていると指摘。こうした慣行が法令違反につながると強く警鐘を鳴らしている。

フリーランス取引適正化法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、通称「フリーランス新法」とも呼ばれる。2023年4月28日に可決、同年5月12日に公布され、約1年半の周知期間を経て2024年11月1日に施行された。本法は、従業員を使用しない個人事業者である「特定受託事業者」(フリーランス)と、彼らに業務を委託する「特定業務委託事業者」(発注事業者)との間の取引の適正化を図ることを目的としている。

発注事業者には、取引条件の書面・電磁的明示(第3条)、60日以内の報酬支払(第4条)、7類型の不当行為の禁止(第5条)などが義務付けられている。

公取委が監視強化、出版業界全体の是正を促す

今回の勧告は、出版業界におけるフリーランスとの不適切な取引形態が広く存在するという公取委の認識に基づくものであり、監視強化の一環として実施された。勧告を受けた小学館と光文社は、今後、取引条件の明示や支払遅延の是正を含む再発防止策を講じる必要がある。

公取委は、本法違反に対し、指導・助言、勧告、命令、罰金といった段階的な行政措置を講じることが可能だ。今回の勧告は、行政名での是正要求であり、社名が公表される。

公取委は2025年度、出版・IT・映像制作などクリエイティブ分野を重点監視対象に指定しており、今回の勧告を皮切りに、今後、他社への調査や行政指導も加速する可能性が高い。フリーランスを取り巻く取引環境の適正化は、出版業界にとって喫緊の課題であり、業界全体の意識改革と実務の見直しが求められている。