Apple Original Filmsが配給する、ブラッド・ピット主演の新作映画『F1』が、公開後わずか10日間で全世界興行収入2億9300万ドルを記録し、同社の歴代最高興行収入作品となったことが明らかになった。これは、マーティン・スコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(全世界興収1億5800万ドル)や、リドリー・スコット監督の『ナポレオン』(同2億2100万ドル)の最終興行収入をすでに上回る快挙である。
Appleの劇場公開戦略における重要な一歩
テクノロジー大手Appleにとって、本作の成功は映画事業の将来を占う重要な試金石であった。これまで『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(4200万ドル)や『アーガイル』(9600万ドル)といった作品が興行的に苦戦を強いられてきた背景がある。
特に、2億ドル以上の巨額の製作費が投じられた『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』や『ナポレオン』が劇場興行で利益を上げることが困難であったことから、本作『F1』の成績には社内でも大きな注目が集まっていた。観客動員が見込める本作が成功しなければ、Appleは映画事業から撤退し、『セヴェランス』や『テッド・ラッソ』など成功例の多いテレビシリーズ制作に注力する可能性も示唆されていた。
今回のヒットは、Appleが今後も劇場用映画への投資を続ける大きな理由となるだろう。
巨額の製作費と今後の展望
本作の成功は確実なものとなりつつあるが、課題も残る。製作費は2億5000万ドル以上、さらにマーケティング費用として約1億ドルが投じられており、この巨大な投資を回収するには、まだ複数周のラップが必要となる。
しかし、オリジナル脚本の大人向け映画としては異例の好調な滑り出しであり、今後の興行にも期待がかかる。強力な口コミが、今後公開される『ジュラシック・ワールド リバース』や『スーパーマン』といった大作との競争においても、本作の持続的な人気を後押しすると見られている。
『トップガン マーヴェリック』監督とIMAXが生んだ圧倒的没入感
本作の監督は、『トップガン マーヴェリック』で大成功を収めたジョセフ・コシンスキーが務める。物語は、ブラッド・ピット演じる引退したF1ドライバーが、若きルーキーを指導し、低迷するチームを救うために復帰するというものだ。
ヒットの大きな要因として、IMAXカメラを駆使した撮影が挙げられる。実際のF1世界サーキットを転戦しながら撮影された映像は圧倒的な没入感を生み出し、プレミアム・ラージ・フォーマット(PLF)での上映が観客を惹きつけている。IMAXでの興行収入は全世界で6000万ドルに達し、総興行収入の20.4%を占めるに至っている。
北米での興行収入は1億950万ドルに達し、その他の主要な国・地域では、中国(2200万ドル)、イギリス(1730万ドル)、メキシコ(1230万ドル)、フランス(1150万ドル)、オーストラリア(980万ドル)が好成績を収めている。
ソース:‘F1’ Overtakes ‘Napoleon’ as Apple’s Highest-Grossing Film