2025年7月11日、日本全国を巡回してきた「鈴木敏夫とジブリ展」が、鈴木敏夫プロデューサーの故郷である愛知県の愛・地球博記念公園で待望の最終章を開幕した。本展では、幼少期から現在に至るまで鈴木プロデューサーが吸収してきた約8,800冊の「本」、10,000作品の「映画」に加え、新たに「音楽」に焦点を当てた新展示が登場。スタジオジブリの誕生秘話と鈴木敏夫という人物の深層に迫る内容となっている。

目次
故郷での開催に鈴木敏夫プロデューサーも感慨
開幕に先立ち、7月11日には愛・地球博記念公園体育館で開会式が開催され、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登壇した。地元愛知での開催に際し、鈴木プロデューサーは「振り返ってみると、宮さん(宮﨑駿)と初めて話したのは1978年5月。もう47年も経つ。47年間、1人の人間とちゃんと付き合ったということは、多少誇ってもいいのではないか」と語り、宮﨑駿監督との長きにわたる関係性を振り返った。また、自身の出身地が名古屋市昭和区元“宮”町であることや、母方の祖母の名前が「みや」であることに触れ、「人間には運命があるものだ」と運命的なつながりを示唆した。
本展は「言葉の魔法展」から数えて14会場目となり、今回で幕を閉じるとのこと。「ぜひ、いろんな方々に見ていただけたら僕たちは嬉しい」と、来場への期待を述べた。
愛知限定!高さ15mの巨大な湯屋と新展示「音楽コレクション」

今回の愛知展の目玉は、なんといっても愛知限定で登場した高さ約15メートルにも及ぶ『千と千尋の神隠し』の湯屋とその周囲の街並みを再現した空間だ。鈴木プロデューサー自身の発案で、当初はジブリパーク内での設置も検討されたという。会場の広さを活かし、映画の世界に没入できる幻想的な体験を提供する。
さらに、これまで公開されてこなかった「鈴木敏夫の音楽コレクション」が新たに加わった。鈴木プロデューサーの血肉となった「本」や「映画」に続く第3弾として、初めて購入したレコードや、毎日聴いていたラジオ番組、友人と歌った曲など、彼の人生に寄り添ってきた音楽の数々がレコードジャケットと共に展示される。

秘蔵コレクションを公開!中日ドラゴンズコーナーも
その他にも、充実した展示内容が来場者を待っている。
- 鈴木敏夫の本棚: 鈴木プロデューサーの思考の源泉ともいえる約8,800冊の書籍が並び、一部は実際に手に取って閲覧可能。
- 鈴木敏夫の映画コレクション: 約10,000作品に及ぶ映画コレクションを展示。過去の名作から隠れた一本まで、映画の歴史を垣間見ることができる。
- 湯婆婆・銭婆の恋愛開運おみくじ: 約3mの巨大な湯婆婆と銭婆の口に手を入れて引くおみくじは、ユーモラスな体験を提供。
- 秘蔵コレクションの中日ドラゴンズコーナー: 「ドラゴンズはただひとつ残った僕の名古屋だ」と語る鈴木プロデューサーの秘蔵グッズが公開される。ドラゴンズ公式ファンクラブのために生まれた「ガブリ」のレイアウト原画は初公開であり、宮﨑駿監督との誕生秘話にも注目が集まる。特に、ドラゴンズが優勝した際の中日スポーツの切り抜きは、鈴木プロデューサーが大切に保管していた当時のものがそのまま展示されている。

愛知のものづくりとのコラボレーションも実現
本展では、愛知のものづくりとのコラボレーションも実現した。不思議の町内に飾られている提灯は、名古屋提灯の職人が製作し、展覧会クリエイティブ・ディレクターの小松季弘氏が文字を入れたものだ。また、愛知展オリジナルグッズとして、国内綿織物発祥の地である三河地方の木綿に鈴木敏夫氏が描いた千尋やカオナシを刺繍したガーゼハンカチ、そして日本を代表するやきものの産地である瀬戸で製作された、カオナシやクロスケ、「バルス!」の書がデザインされた箸置きなども販売されている。
開催概要
- 会期: 2025年7月12日(土)~ 9月25日(木)
- 休館日: 火曜日(ただし9月23日(火・祝)は開館し、翌9月24日(水)は休館)
- 開館時間: 9:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
- 会場: 愛・地球博記念公園 体育館
- 主催: スタジオジブリ、中日新聞社、愛知万博20周年記念事業実行委員会
- 公式HP: https://static.chunichi.co.jp/chunichi/pages/event/suzukitoshio_ghibli/
「鈴木敏夫とジブリ展」は、ジブリファンはもちろんのこと、鈴木敏夫という稀有なプロデューサーの人物像、そしてジブリ作品が生まれる背景に深く触れることができる貴重な機会となるだろう。