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【感想】『ヴァージン・パンク Clockwork Girl』レビュー。これぞ梅津泰臣!OVAの魂が令和に蘇る


シャフト制作、梅津泰臣監督作品『ヴァージン・パンク』の第1弾「Clockwork Girl」を見てきた。今年はこの作品と「まどマギ」新作でシャフトイヤーになるなあとか思っていたら「まどマギ」が2026年に公開延期になってしまい、残念なのだが、とにかく本作をスクリーンで見ることができてよかった。梅津監督と言えばこういう作品だよね、こういう描写だよねというものが存分に含まれていて、期待通りの内容だった。

本当に昔のOVAのような内容の作品だし、描写も同様。大変に懐かしい匂いのする作品だった。

梅津泰臣の世界が濃厚に復活

本作は、2099年の未来を舞台にしたバイオレンスアクションだ。ソーマディアというサイボーグ技術が発達して、脳以外を義体化した犯罪者が跋扈する世界。生身の肉体よりもはるかに運動能力が高いソーマディア犯罪に対抗すべく、バウンティハンター制度が導入されている。

主人公の神氷羽舞は、児童養護施設で暮らしていたが、その園長は親を殺して子どもをさらって施設を運営している極悪人だった。その園長をバウンティハンターが殺害。ほどなくして羽舞もバウンティハンターで生計を立てるようになっていく。しかも、彼女は生身の肉体でソーマディアの犯罪者に立ち向かう。

しかし、幼いころの彼女の姿に執着するバウンティハンターの元締めのような男Mr.エレガンスが彼女を嵌めて無理やり当時の身体のソーマディアへと改造してしまう。羽舞は、Mr.エレガンスに対する復讐を誓うという物語。

「第一弾」と銘打っているだけあって、物語は完結しない。主人公の羽舞の行動同期のセットアップが終了して、これから復讐に向けて本格的に動いていきそうだというところで終わる。この辺りの終わり方もなんか昔のOVAっぽい。続きが気になるなら2巻を買ってね、的な。

Mr.エレガンスは羽舞がバウンティハンターになったきっかけを作った男で、因縁の相手であり、人生の転機になった存在。そういう存在に対して復讐を企てる少女というのは『A KITE』っぽい筋立てである。そして、サイボーグというかロボットと治安が悪い未来で危険な仕事を請け負う連中が活躍するというのは、『MEZZO FORTE』っぽい。これまでの梅津監督の代表作の要素を融合させたような内容だ。

あらすじや世界観の設定だけじゃなく、梅津監督といえばこういう描写がだよね、というシーンが満載だった。美少女による華麗で派手な銃撃戦と血なまぐさいバイオレンスのオンパレードで、テレビでは難しいような描写にあふれている。

リアル作画の神髄

本作の、最初に公開されたティザー映像は、病院服を着た羽舞がよろよろと歩くショットだった。あのショットのキャラクターの動きのリアルさがすごいが、あのショットに象徴されるリアル作画が堪能できる作品となっている。

この最初のショットは本当にすごい。体重移動というか、重心のかかり方で本当に身体が重くて動きが鈍い感じがすごい。

これ以外のシーンもとにかく、よくキャラクターが動きで芝居している。わずか35分の作品だけど、かなり時間のかかる作品だろう。アクションシーンも最近多い、カメラをぶん回すだけじゃなくて、キャラクターをどう動かし、どう組み立てるか、ユニークなアイディアも豊富で、煙などのエフェクトもたくさん描きこまれるし、人体も乱れ飛ぶ。回り込み作画なんかも堂々とやるし、立体感の表現もすごい。

第2弾がいつになるのかわからないが、首を長くして待ちたい。久にぶりに『A KITE』も見たくなってしまったので、どこかで特集状態とかやらないだろうか。上映素材があるかわからないが。

 

梅津泰臣×シャフト オリジナルアニメ『ヴァージン・パンク』公式サイト