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レベッカ・ローミン、『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』撮影終了に疑問符 ― ジェームズ・ガンが警鐘を鳴らす「未完成脚本」問題と業界の課題


ミスティーク役の再演、25年ぶりの挑戦で「なりきった」感覚を語る一方、脚本未完成の現状に業界の構造的問題が浮き彫りに

サンディエゴで開催されたコミコンにおいて、『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』に出演中の女優レベッカ・ローミンが、待望のマーベル映画『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』におけるミスティーク役の撮影状況について言及した。ローミンは、脚本がまだ完成していないため、自身の撮影が終了したかどうか「確信が持てない」と明かしており、この発言は、映画業界が抱える「未完成脚本での映画制作」という長年の問題を改めて浮き彫りにしている。

脚本未完成での撮影続行、機密保持の裏側で進行する制作の「混沌」

ハリウッド・リポーターのインタビューに応じたローミンは、撮影の終了時期について尋ねられ、「まだ確信が持てない」と回答した。「脚本がまだ…彼らは書き終えていない。非常に楽しい経験だが、まだ分からない。彼らはすべてを極秘にしている」と述べ、制作陣が情報の漏洩防止に最大限の努力を払っていることを示唆した。

脚本全体を読んだかとの質問には、「脚本全体を読んだかどうかは肯定も否定もできない」とコメントを避け、共演者についても「言えない」と口を閉ざした。しかし、旧『X-MEN』キャストと新キャストが混在する中での撮影は「超現実的」な体験だったと語っている。ローミンの発言は、ジェームズ・ガンが米NPRで展開した「脚本が完成していない映画は作らない」という持論と対照的であり、映画業界の現状に対する懸念を裏付けるものと言えるだろう。

過去と現在の融合、そして役柄への「なりきった」感覚

ローミンは、約20年ぶりにミスティーク役を再演することについて、その独特の感覚を共有した。「昔のキャストと新しいキャストが一緒にいるのは非常に超現実的だった。撮影の大半をそこで過ごしている間、奇妙な夢をたくさん見た。まるで、非常に退行的な夢のようなものだ」と述べ、自身の脳が20年、25年前に演じたキャラクターとの再会に順応しようとしていたことを示唆した。

また、2000年の『X-MEN』でミスティーク役を演じた当初は「インポスター症候群」(詐欺師症候群)に悩まされたが、今回はその感覚はなかったと語った。「彼女のことは非常によく分かっている。完全に彼女になりきって臨んだ。あのキャラクターを再び演じるのは非常に素晴らしいことだった。最初の方はインポスター症候群があったからだ」と述べ、今回の復帰では役柄への深い理解と自信を持って臨めたことを強調した。

ジェームズ・ガンが警鐘を鳴らす「脚本なき映画製作」の弊害

新DCユニバースの舵取り人であるジェームズ・ガンは、レベッカ・ローミンの発言が示すような「脚本が完成していない映画制作」に対し、長年にわたり強い批判を繰り返してきた。彼は、近年スーパーヒーロー映画の「人気のかげり」や「スーパーヒーロー疲れ」が指摘される現状に対し、「ヒーローものなら何でも儲かる」という安易な発想と、視覚効果の発達に頼りすぎた結果、駄作が増え、観客に飽きられたことが原因だと分析している。

ガンは、「映画業界は今、まさに混沌の極みにある」と語り、特にIP(知的財産)が牽引し、公開予定日が創作プロセスを支配している現状を問題視している。「まず公開日を決める。それで脚本はない。そこから、公開日に間に合うように脚本を書こうとするわけです」と、スタジオの**「見切り発車型」の制作プロセス**を強く批判している。

業界の裏側で横行する「脚本未完成」問題と、その根深い原因

ガンは、「大作映画の撮影期間のうち、8割は脚本が仕上がっていない状態で撮っているんです」と驚くべき実態を暴露し、「酷いですよ。そういう映画は駄作になりますから。脚本に基づいてやるべきです」と断言する。

この問題の背景には、**「十分な数の優秀な脚本家がいない」**という深刻な問題が存在するとガンは指摘する。「テレビ業界が優秀な脚本家のほとんどを奪ってしまったのです。優秀な脚本家のほとんどはテレビに行って、そこで責任を任されます。やりたいことができるからですね。今や、テレビが芸術の舞台となっている」と、映画業界が優れた人材を確保できていない実情を明かした。Apple TV+の「セヴェランス」や自身のDCドラマシリーズ「ピースメイカー」を例に挙げ、「テレビではやりたいこともやれるし、お金も稼げるし、ボスにもなれる」と、映画業界が脚本家にとって魅力的な環境を提供できていない現状を憂いている。

最終幕の整合性なき映画、そして「嫌われたくない」業界の歪み

ガンはさらに、未完成の脚本で撮影を進めることで、「第一幕が素晴らしいのに、それが最終幕と繋がっていないこと」が頻繁に起こると指摘する。「最後に繋がる流れが書けていないと、映画はうまくいかない。プロットとはそういうものではありません。時計のようなもので、全てがピタリとハマって一緒に動かなきゃいけない」と、映画制作における脚本の重要性を強調した。

ガンはこのような状況に対し、「僕は何度も何度もそういう光景を目にしてきましたし、めちゃくちゃ腹が立ちます。この話を僕が何度も何度も繰り返しても、彼らはまだそういうことをやっている。おかしいですよ、これ。僕は絶対にやらない。絶対にやりたくない」と、強い憤りを露わにしている。

実際にガンは、自身が就任したDCスタジオで、脚本が納得のいくレベルに達しない未発表企画を中止した経験を明かしている。巨額を費やす大作が見切り発車で動き出す理由として、「みんなゴーサインをもらうことに大興奮して、とにかく作ってしまうから」であり、さらには**「全員に“イエス”と言わなくちゃいけないから、全員を失望させたくない」という、業界に蔓延する「嫌われたくない」心理**が背景にあると分析している。これは、金銭や利益だけでなく、人間関係や承認欲求が映画制作の意思決定に悪影響を与えていることを示唆している。

DCユニバースの未来と、脚本優先の姿勢

マーベル・シネマティック・ユニバースでの経験から強みと課題を学んだガンは、新DCユニバースの計画発表には慎重な姿勢を見せている。現在公開中のシリーズ映画第1弾『スーパーマン』は、全体におけるチャプター1である『Gods and Monsters』に属しているが、このことはあまり強調されていない。

2023年2月にこのチャプターの作品予定がいくつか発表されたが、現在までにきちんとリリース計画が固まっているのは、2026年US公開予定の映画『スーパーガール』と『クレイフェイス(原題)』、同年HBOマックス配信予定の「ランタンズ」に留まっている。ガンは、他の複数の企画についても、きちんと納得のいく脚本が完成してから製作を進める意向を示している。

親会社ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのデヴィッド・ザスラフCEOは、「我々はジェームズ・ガンの情熱とビジョンが大スクリーンで具現化した『スーパーマン』の飛翔を目にしました。『スーパーマン』はまだファースト・ステップ(第一歩)に過ぎません」と、ガンの手腕と今後のDCユニバースへの期待を表明している。

情報によると、『スーパーマン』のヒットを受けてワーナー・ブラザースは新たな『ワンダーウーマン』映画の準備を加速させているという。こちらも、ジェームズ・ガンが承認する脚本が仕上がってから、最終的なゴーサインを経て製作開始となることだろう。レベッカ・ローミンの発言は、ガンが警鐘を鳴らす「脚本先行」の重要性を、改めて示唆していると言える。

今回のレベッカ・ローミンの発言は、映画制作の舞台裏で何が起こっているのか、そしてそれが作品の質にどのように影響するのかについて、私たちに何を語りかけているのでしょうか。