ついに5人の部員が揃い、団体戦への道が開けた梅園高校競技かるた部。しかし、その前には新入部員は、まず歌を覚えて競技かるたに必要な体力を身に着けないといけないという、大きな壁が立ちはだかる。顧問の大江奏(上白石萌音)が実施した百人一首の暗記テストでは、元野球部の村田千江莉(嵐莉菜)が壊滅的な成績を記録。一方、主人公・藍沢めぐる(當真あみ)は素振りの練習についていけず、体力的な課題が浮き彫りになる。文化部でありながら運動部の側面も持つ競技かるたの過酷さが、早くも新入部員たちを打ちのめす。
西田優征のかるた会の門を叩く新入部員たち
4人の新入部員強化のため、奏は自身もかつて所属したかるた会「府中夕霧会」への入会を勧める。会長を務めるのは、奏のかるた仲間であり、頼れる兄貴分の西田優征(矢本悠馬)だ。しかし、入会には「50枚の札の中から3枚取る」という厳しい条件が課せられる。たった3枚と高を括っていた部員たちだが、実力者である西田を前に一枚も取ることができず、かるたの奥深さと厳しさを痛感させられる。
そんな中、部員たちはそれぞれが抱える問題と向き合うことになる。奥山春馬(高村佳偉人)は、歌が始まると正座が崩れてしまうイップスを告白し、マネージャーへの転向を申し出る。奏は、偶然再会した憧れの有名読手・中西泉(富田靖子)から、自身の読みにおける鼻濁音の未熟さを指摘され、練習法として演歌「天城越え」を歌うことを勧められる。めぐるに「エビデンス(証拠)になる」と約束した手前、顧問として自らも成長しようと努力を始める。
千江莉が野球部を辞めた本当の理由
今回の物語の中心となるのは、千江莉が抱える葛藤である。百人一首の暗記に苦しむ彼女は、かつての野球部仲間に「野球バカのくせに」と揶揄され、怒りを露わにする。彼女は、男子との体格差が広がり続ける現実から逃げるように野球を「飽きた」と偽り、競技から離れた過去があった。しかし、本当の理由はそれだけではなかった。バッテリーを組んでいた幼馴染の永島が、実力がありながらも千江莉との関係にこだわりレギュラーになれていないと監督から告げられたこと。その事実を永島が知れば野球を辞めてしまうかもしれない、その一心で彼女は身を引いたのだった。男女の体力差が勝敗を分ける世界に絶望した千江莉。だからこそ、市民大会で目の当たりにした月浦凪(原菜乃華)の戦いぶりに、年齢も性別も関係ない競技かるたの世界に光を見出し、入部を決意したのである。
友札で友情を育むめぐると千江莉
千江莉の苦悩を知っためぐるは、彼女のために手作りのイラスト付き記憶カードを渡す。そして、バイトも辞め、かるたに打ち込む覚悟を決める。一方、与野草太(山時聡真)は、西田に勝つための作戦として、決まり字が途中まで同じである「友札」の利用を提案する。
めぐると千江莉は特訓に励み、再び西田との対戦に挑む。友札を狙い、二人で同時に取りに行くことで、西田の反応速度を上回り、彼の「囲い手」を破ることに成功。ついに3枚の札を奪取し、府中夕霧会への入会を認められた。
本エピソードは、千江莉の姿を通して「スポーツとジェンダー」という普遍的なテーマを描き出した。体格差という壁に直面し、一度は夢を諦めかけた少女が、競技かるたという新たな舞台で再び輝きを取り戻すまでの葛藤と決意が丁寧に綴られている。それぞれの壁を乗り越え、仲間との絆を深めた梅園高校かるた部。彼らの本当の戦いは、まだ始まったばかりだ。