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【映画業界分析】IMAX一強に揺らぎ?競合PLF連合構想の現実味と課題


映画鑑賞体験のプレミアム化が進む中、巨大スクリーンと高品質な音響で知られる「IMAX」が興行収入を牽引し、ウォール街でもその存在感を高めている。しかしその裏で、他のプレミアム・ラージ・フォーマット(PLF)を提供する映画館チェーンからは、IMAXの独走状態に対する焦りともいえる動きが観測されている。本記事では、IMAXの現状と、それを取り巻く映画興行界の思惑を深掘りする。

絶好調のIMAX、興行収入を牽引

かつてIMAXは、博物館などで上映される自然ドキュメンタリー向けの巨大スクリーンというイメージが強かった。しかし現在、その立ち位置は大きく変化し、ハリウッド大作の興行を左右する重要なフォーマットとなっている。

IMAX社の広報部門は、週末ごとに新作映画の総興行収入のうち、どれだけがIMAXスクリーンから生み出されたかを発表し、その影響力をアピールしている。その勢いは数字にも表れており、2025年度第2四半期は、同社の米国内興行収入において過去最高の四半期を記録。通年で$12億の売上目標達成に向けて順調に進んでいる。

直近の例では、7月11日から14日の週末に公開された映画『スーパーマン』のオープニング興行収入$1億2,500万のうち、$1,910万を北米約400のIMAXシアターが占めた。これは市場シェアの実に15.6%に相当する記録的な数字である。

見過ごされる「IMAX以外」のPLFの貢献

しかし、IMAXの華々しい成功の影で、見過ごされがちな事実がある。『スーパーマン』のオープニングにおいて、IMAXを含むPLF全体の興行収入は、総興収の40%に達していた。これは、IMAX以外の約900のPLFスクリーンが、合計で約$2,600万を稼ぎ出したことを意味する。

また、IMAXでの上映がなかった『ジュラシック・ワールド/リバース』では、PLFがオープニング興収の30%を占めるなど、IMAX以外のフォーマットも大きな貢献をしている。にもかかわらず、その功績がIMAXのように大きく報じられることは少ない。この現状が、一部の興行主の間で不満を生む一因となっている。

「反IMAX連合」構想、実現は困難か

こうした状況を受け、IMAX以外のPLFを持つ興行主たちが団結し、IMAXに対抗するブランド価値を共同で高めようとする動きが水面下で議論されているという。IMAXだけがプレミアムな選択肢ではないことを観客にアピールする狙いだ。

しかし、この「反IMAX連合」構想の実現には高いハードルが存在する。AMCシアターズ、シネマーク・シアターズ、リーガル・シネマズといった米国の巨大映画館チェーンは、IMAXスクリーンを運営する一方で、「Dolby Cinema」や自社ブランドのPLF、さらには「ScreenX」や「4DX」といった新興フォーマットも導入している。

これらのチェーンが連合に参加して特定のPLFを大々的に宣伝することは、自社で運営するIMAXや他のフォーマットとの競合を招き、消費者の混乱を引き起こしかねない。事実、北米で最も多くのIMAXスクリーンを運営し、Dolby Cinemaの独占的提供元でもあるAMCは、この連合構想に興味を示していないと報じられている。

IMAX CEOが語る優位性と競合の反論

IMAXのCEOであるリチャード・ゲルフォンド氏は、最近の投資家向け説明会でこの動きに言及。「いかなるコンソーシアム(連合)が結成される可能性も低い」と述べ、大手興行主たちがIMAX事業の継続、あるいは新規参入を望んでいると強調した。

ゲルフォンド氏は「2025年のプレミアム映画公開週末において、我々は15%の市場シェアを記録している。これはIMAXを導入してこなかった興行主にとって『目覚めの瞬間』だ」と分析。「我々のブランド、映画製作者との関係、そして優れた技術は他に類を見ないものであり、観客はそれを知っている」と、その優位性に絶対の自信を見せた。

もちろん、この見解に全ての関係者が同意しているわけではない。「Dolby Cinema」の関係者は、製作段階から映画制作者と協力する体制を強化しており、IMAXの優位性に異議を唱えるだろう。アジアや中南米で絶大な人気を誇り、米国でも勢いを増す「4DX」も同様である。

錯綜する情報とPLFの今後の展望

ある配給関係者は、IMAX一強体制に一石を投じるため、米国内の興行主が実際に団結を話し合っていると認めている。一方で、別の興行関係者は、この話は春に開催された業界イベント「シネマコン」での議論が誇張されたものだと指摘する。そこでの会話は、あくまで4DXやScreenXなどが拡大する中で、PLF全体の価値をいかに最大化するかという議論に過ぎなかったというのだ。

「反IMAX連合」が最終的に形になるかは不透明なままだ。しかし、IMAXが市場を席巻する一方で、Dolby Cinema、4DX、ScreenXといった多様なフォーマットが着実に支持を広げているのも事実である。映画館チェーンは今後、IMAXと他のPLFをどのように組み合わせ、観客に最高の鑑賞体験を提供していくか、より高度な戦略性が問われることになるだろう。

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