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王谷晶『ババヤガの夜』、米ラムダ文学賞の最終候補に!日本人初の快挙、ダガー賞に続くW受賞に期待


作家・王谷晶氏の小説『ババヤガの夜』の英訳版『The Night of Baba Yaga』が、アメリカ最大級のLGBTQ文学賞である第37回ラムダ文学賞の〈LGBTQ+ミステリー部門〉で最終候補作に選出された。この快挙は、2025年7月30日(アメリカ・ニューヨーク時間)に発表された。同部門における日本人作家のノミネートは史上初となる。

本作は先日、世界最高峰のミステリー文学賞である英国のダガー賞〈翻訳部門〉を受賞したばかりであり、それに続く国際的な文学賞でのノミネートとなった。前人未到のW受賞に大きな期待が寄せられている。受賞作の発表は、10月4日(アメリカ・ニューヨーク時間)にオンラインで行われる予定だ。

ババヤガの夜

ラムダ文学賞〈LGBTQ+ミステリー部門〉で日本人初のノミネート

 

ラムダ文学賞は1989年に創設された、アメリカで最も権威のあるLGBTQ文学賞の一つである。過去にはスーザン・ソンタグやパティ・スミスといった著名な作家も受賞しており、米国文学界における多様性と表現の自由を象徴する賞として知られている。

ラムダ文学協会の新エグゼクティブ・ディレクター、J・クラップ氏は、公式サイトで今年の候補作について次のようにコメントしている。 「今年のショートリストは、法律や偽情報によってLGBTQ+の物語が攻撃されているこの時代において、私たちの声と、それを乗り越えてきた力強さを映し出しています。」

日本人作家の作品が同賞の最終候補に選ばれるのは極めて稀であり、今回のノミネートは日本文学が国際的に高く評価されていることを示す画期的な出来事である。

 

世界が注目する『ババヤガの夜』とは

『ババヤガの夜』は、2020年に「文藝」秋季号で発表後、単行本化され、2023年に河出文庫から刊行された作品である。国内では単行本、文庫、電子書籍を合わせた累計部数が32万部を突破するなど、多くの読者の支持を集めている。

物語は、喧嘩だけが取り柄の主人公・新道依子が、関東有数の暴力団組長の一人娘の護衛を命じられるところから始まる。性格の合わない二人の奇妙な同居生活を通じて、依子はやがてその家に隠された秘密に触れていく。

繊細かつ哀切に描かれる女性同士の名前のつけられない関係性と、物語終盤で明かされる大胆な仕掛けが特徴で、「圧巻のシスター・バイオレンス・アクション」と評されている。その人気は国内に留まらず、イギリス、アメリカ、韓国で翻訳版が刊行中であり、今後はドイツ、イタリア、ブラジルでの出版も予定されている。

 

栄誉あるラムダ文学賞の概要

ラムダ文学賞(通称:ラミー賞)は、ラムダ文学協会が主催し、LGBTQをテーマとする文学作品の可視化と認知拡大を目的としている。フィクション、ノンフィクション、詩、ミステリーなど現在26のカテゴリーで毎年受賞作を選出しており、多様性と文学性を両立した作品が高く評価される。

過去に日本関連の作品では、高橋睦郎『十二の遠景』や田亀源五郎『弟の夫』などが最終候補に選ばれた例はあるものの、日本人作家による受賞はこれまでなく、今回の王谷氏のノミネートが日本文学史においていかに大きな快挙であるかがうかがえる。

 

著者および翻訳者の紹介

著者:王谷 晶(おうたに あきら) 1981年、東京都生まれの作家。『完璧じゃない、あたしたち』『君の六月は凍る』など多数の著作を持つほか、『カラダは私の何なんだ?』などのエッセイ集も手掛けている。

翻訳者:サム・ベット(Sam Bett) 1986年、アメリカ・ボストン生まれの小説家、翻訳者。川上未映子作品の翻訳(デビッド・ボイドとの共訳)で国際ブッカー賞候補に選ばれるなど、現代日本文学を英語圏に紹介する第一人者として高く評価されている。

 

書誌情報

『ババヤガの夜』(河出文庫)

  • 著者:王谷 晶
  • 発売日:2023年5月9日
  • 定価:748円(税込)
  • ISBN:9784309419657
  • 出版社:河出書房新社

アメリカ版『The Night of Baba Yaga』

  • 訳者:Sam Bett
  • 出版社:Soho Crime
  • 発売日:2024年7月2日

イギリス版『The Night of Baba Yaga』(ダガー賞受賞)

  • 訳者:Sam Bett
  • 出版社:Faber & Faber
  • 発売日:2024年9月12日