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クランチロール、人員削減を発表。ソニー傘下のアニメ配信大手、海外成長市場へ注力するための組織再編


ソニーグループ傘下で世界最大級のアニメ配信サービス「Crunchyroll(クランチロール)」は、組織再編の一環として人員削減を実施することを発表した。これはコスト削減を目的としたものではなく、インド、メキシコ、ヨーロッパといった急成長市場へのリソースシフトと投資強化が狙いである。

 

海外成長市場へのシフトが人員削減の背景

クランチロールの社長であるラフル・プリニ氏が従業員向けに送ったメモによると、今回の組織再編は、米国以外の高成長市場への注力を強化するために行われるものだ。人員削減の具体的な規模は明らかにされていないが、同社は現在1,000人以上の従業員を抱えている。

プリニ社長はメモの中で、「今後3~5年を見据えた時、私たちが進むべき道は、地域ごとに権限を与えられたチームがアニメファンダムにさらに深く入り込むことをサポートする、新しい組織モデルであると信じている」と説明。その上で、「今回の変更はコスト削減策や業績に起因するものではない」と強調した。

この再編により、一部の従業員は退職する一方、役割が拡大されたり、新しい役職に任命されたりする従業員もいるという。人員削減は、北米、ヨーロッパ、アジアの9か国13のオフィスにわたって行われる。

 

技術拠点新設と「360度のファン体験」への投資

人員削減と同時に、クランチロールは新たな成長への投資も計画している。特に、エンジニアリング部門の強化のため、米国、メキシコ、インドに新たな技術ハブを設立する予定だ。これにより、技術革新と変革を促進し、グローバルなサービス展開を加速させる狙いがある。

また、中核事業であるアニメ配信に加え、コレクティブルグッズやその他の商品、マンガといった「360度のファン体験」を提供する事業への投資も強化する方針である。具体的には、2025年後半にサブスクリプションサービスの一部としてデジタルマンガサービスを開始する計画も明らかにされている。

 

1700万人超の会員を抱えるアニメの巨人

2025年第1四半期末時点で、クランチロールの有料月額会員数は1700万人を超えている。同社は、米国のソニー・ピクチャーズエンタテインメントと、日本のソニー・ミュージックエンタテインメント(ジャパン)傘下のアニプレックスによる合弁事業であり、ソニーグループのアニメ戦略の中核を担う存在だ。

ソニーは2017年にアニメ配信サービス「ファニメーション」を買収。その後、2021年にAT&Tからクランチロールを現金$11.8億で買収し、翌年にはファニメーションのブランドをクランチロールに統合し、コンテンツを集約した経緯がある。

今回の組織再編は、グローバルなアニメ市場のさらなる成長を見据え、より柔軟かつ地域に最適化された体制を構築するための戦略的な一手と言えるだろう。

ソース:Crunchyroll Layoffs: Anime Service Restructures for International Growth