トランプ政権は21日、有効な米国ビザを保有する外国人5500万人以上を対象に、ビザ取り消しや国外退去につながる違反行為がないか審査していることを明らかにした。これは、合法的に米国内に滞在する外国人に対する取り締まりを大幅に強化する動きである。審査は「継続的」に行われ、SNSの投稿内容なども対象となる。また、これとは別に商業トラック運転手向けの就労ビザ発給を即時停止することも発表された。
5500万人超の全ビザ保有者が「継続的審査」の対象に
米国務省がAP通信の質問に書面で回答したところによると、観光客を含むすべての米国ビザ保有者は「継続的審査(continuous vetting)」の対象となる。この審査は、米国への入国や滞在の資格がないことを示唆するいかなる兆候も見逃さないことを目的としている。
もし審査の過程で不適格と判断される情報が見つかった場合、対象者のビザは取り消される。その時点で本人が米国内に滞在していれば、国外退去処分の対象となる。トランプ政権はこれまでも不法移民や特定の学生ビザ保有者の取り締まりに注力してきたが、今回の発表は、合法的な滞在許可を持つ人々でさえ、その許可が突然取り消される可能性があり、審査対象がはるかに広範囲に及ぶことを示唆している。
SNSや犯罪歴も徹底調査 違反発覚でビザ取り消し
国務省によると、審査ではビザで許可された期間を超えた滞在(オーバーステイ)、犯罪行為、公共の安全への脅威、テロ活動への関与やテロ組織への支援などが不適格の指標として調査される。
「我々は法執行機関や移民関連の記録、あるいはビザ発給後に明らかになった潜在的な不適格性を示すその他のあらゆる情報を含め、利用可能なすべての情報を審査の一環としてレビューする」と同省は述べている。
審査には、SNSアカウントの完全な調査、母国での法執行・移民記録、米国内で犯した法律違反などが含まれる。今年導入された新たな要件により、ビザ申請者は面接時に携帯電話などのプライバシー設定をオフにすることが義務付けられており、これにより当局はSNSを徹底的に調査することが可能になった。
商業トラック運転手の就労ビザ、即時発給停止
これに加えて、マルコ・ルビオ国務長官は21日、SNSのX(旧Twitter)上で、商業トラック運転手に対する就労ビザの発給を即時停止すると発表した。
ルビオ長官は「米国の道路で大型トレーラートラックを運転する外国人ドライバーの増加は、米国民の命を危険にさらし、米国のトラック運転手の生活を脅かしている」と投稿し、変更の理由を説明した。運輸省は以前から、運転手の英語能力不足が交通死亡事故の一因となった事例を受け、英語の読み書き能力要件の執行を強化していた。
審査対象の拡大とビザ取り消しの実績
今回の全ビザ保有者の審査は、当初、政府が親パレスチナまたは反イスラエル活動に関与していると見なした学生を中心に進められていたプロセスを大幅に拡大したものである。
国務省によれば、トランプ政権発足以降、ビザの取り消し件数は前年同期比で2倍以上に増加し、特に学生ビザの取り消し件数は約4倍に達しているという。
また、トランプ氏がホワイトハウスに復帰して以来、オーバーステイや暴行、薬物・飲酒運転、テロ支援などの法律違反を理由に6,000件以上の学生ビザが取り消された。そのうち約200から300件は、指定テロ組織への支援などテロ関連の問題によるものであった。
今回の措置は、日本などが加盟するビザ免除プログラム(VWP)の対象国以外の、中国、インド、ロシア、そしてアフリカ諸国など、ビザ取得が必須の国の国民に大きな影響を与える可能性がある。