ロサンゼルス(L.A.)における映画・テレビ制作の急激な落ち込みが深刻化する中、地域の撮影許可を統括する非営利団体「FilmLA」の最高経営責任者(CEO)であるポール・オードリー(Paul Audley)氏が、17年間の任期を終え退任することが明らかになった。制作プロジェクトの地域外への流出という大きな課題に直面するハリウッドで、重要な経営陣の交代となる。
制作激減のさなか、FilmLAトップが交代
FilmLAが火曜日に発表したところによると、オードリー氏の後任には、2011年から最高財務・執行責任者(CFO/COO)を務めてきたデニス・ガッチェス(Denise Gutches)氏が来年初めに就任する。ガッチェス氏は、FilmLAのオンライン許可システムの設計者の一人としても知られている。
今回のCEO交代は、L.A.の撮影レベルが深刻な落ち込みを見せる中で行われる。昨年の大規模なストライキ終結から1年以上が経過したにもかかわらず、エンターテインメント業界の制作活動は当初の予想通りには回復していない。多くのスタジオでコンテンツへの支出が削減されていることも追い打ちをかけ、昨年の制作実績は、FilmLAが2017年にデータ追跡を開始して以来、パンデミックで撮影が停止した2020年を除いて最低の水準にまで落ち込んだ。
高コストで煩雑な撮影許可プロセスが足かせに
この制作活動の低迷は、以前から高コストで煩雑だと指摘されてきたL.A.の撮影許可プロセスを巡る緊張をさらに悪化させている。ニューヨークやアトランタ、ロンドンといった、よりコスト効率の高い地域とは異なり、L.A.のフィルムオフィスは地方自治体の一部として運営されていない。今年7月、一部の市民活動家からの反対があったもののFilmLAの契約は5年間更新され、同時に撮影許可プロセスの官僚的な障害を合理化・撤廃するための一連の措置が承認された。
こうした状況下で、ハリウッドの誘致競争における大きな一手として期待されているのが、カリフォルニア州の映画・テレビ税額控除プログラムの大幅な変更である。この変更により、控除額の上限が3億3000万ドルから7億5000万ドルに引き上げられ、対象となる制作の種類も拡大される。これにより、多くの制作がL.A.に戻ってくると広く期待されている。
新体制への期待と変革への課題
次期CEOに就任するガッチェス氏は声明で、「FilmLAを次の段階へと導くことを光栄に思う。映画・テレビ税額控除の再活性化と、ロサンゼルス全体で進行中の数多くの変革的な取り組みにより、FilmLAはこの地域の映画・テレビ産業の創造性と経済的活力を支援するための独自の立場にある」と意気込みを語った。
一方、退任するオードリー氏は、「FilmLAは変化する環境に適応し、成長する能力を一貫して示してきた。デニスとリーダーシップチームが、我々の仕事を定義してきたのと同じ献身と卓越性をもってFilmLAの使命を前進させ続けると確信している」と述べた。
業界からは変革を求める声も上がっている。SirReel StudiosのCEOであるウェス・ベイリー氏は、「我々の業界が急速に変化している中での退任だ」と指摘し、「ガッチェス氏はアプローチの変革を推進する必要があるだろう。理事会がこの機会を捉え、ロサンゼルスを世界の制作の中心に保つための新しいアイデアを取り入れることを望んでいる」とコメントした。
また、今回のリーダーシップ移行に伴い、オペレーション担当副社長のドナ・ワシントン氏が新たに渉外担当副社長に就任し、地域の映画政策の連携強化とクライアントサービスの向上に注力することも発表された。L.A.における制作を手頃でアクセスしやすいものにすることを目指した1年間にわたる内部分析を経て、FilmLAは新体制でハリウッドの復権という重責を担うことになる。