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イニャリトゥ監督、トム・クルーズ主演の新作コメディを語る「世界を驚かせる」— デビュー作『アモーレス・ペロス』25周年秘話も


アカデミー賞受賞監督であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが、トム・クルーズを主演に迎えた待望の新作と、自身の衝撃的なデビュー作『アモーレス・ペロス』の25周年記念修復版について、IndieWireのインタビューで語った。

トム・クルーズとの初タッグ作は「ワイルドなコメディ」

イニャリトゥ監督は現在、トム・クルーズ主演のタイトル未定の新作コメディ映画の編集中である。本作は、監督にとって2015年の『レヴェナント:蘇えりし者』以来の英語作品となり、レジェンダリーが製作、ワーナー・ブラザースが配給を手掛ける。

監督はトム・クルーズとの共同作業について、「これまで撮影現場で経験した中で、最も素晴らしく、予期せぬ、優しく穏やかな関係だった」と絶賛。さらに、「彼の礼儀正しさ、理解力、情熱、誠実さ、そして準備の仕方は見事だ。彼はプロセスを愛している。40年間、映画製作が彼の人生だった。あれほど献身的な人を見たことがない」と、クルーズのプロフェッショナリズムを称えた。

監督は、この新作が観客に新たな体験をもたらすと自信を見せ、「彼は世界を驚かせるだろう。人々は新しい種類の作品を目にすることになる」と語った。

本作にはトム・クルーズのほか、リズ・アーメッド、ザンドラ・ヒュラー、ジョン・グッドマン、ジェシー・プレモンスといった実力派キャストが集結。撮影は3度のオスカー受賞を誇るエマニュエル・“チボ”・ルベツキが担当し、35mmビスタビジョンで撮影された。公開は来年秋頃を予定している。

衝撃のデビュー作『アモーレス・ペロス』が4K修復で蘇る

イニャリトゥ監督のキャリアの原点であるデビュー作『アモーレス・ペロス』(2000年)が、公開25周年を記念して4K修復された。修復版は今年5月のカンヌ国際映画祭で上映され、大きな注目を集めた。

監督は25年ぶりに自身の作品を全編通して鑑賞し、「若い男がこれを撮ったのか? と思った。我々が費やした努力、少ない資金と時間の中で注ぎ込んだ仕事量を思うとね。言えることは、この映画の力強さに感銘を受けたということだ。弛緩した映画にはなっていなかった」とその手応えを語った。

オリジナルのネガは、「ブリーチバイパス(銀残し)」という現像処理の影響で腐食が進んでおり、撮影監督のロドリゴ・プリエトと共に painstaking(骨の折れる)な修復作業が必要だったという。サウンドもNBCユニバーサル・スタジオポストのジョン・テイラーによって新たに5.1chサラウンドミックスが施され、作品の持つ暴力性と緊張感がさらに高められている。

メキシコ映画界を変えた一本

25年前、『アモーレス・ペロス』はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれず、批評家週間で上映された。しかし、そこでグランプリを受賞すると、世界中から称賛を浴び、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。この成功は、当時19歳だった主演のガエル・ガルシア・ベルナル、そしてイニャリトゥ監督自身のキャリアを切り拓く大きな一歩となった。

監督によれば、当時のメキシコ映画界は年間5〜7本程度の国内映画しか製作しておらず、政府の助成金に依存する停滞した状況だった。そんな中、本作は「自分たちが何者で、どう自分たちを語り、どう見るべきかを揺さぶる必要がある」という時代の空気と共鳴し、メキシコ映画界に新たな潮流を生み出すきっかけとなったのである。

Mubiでの全世界配信とアートインスタレーション

修復された『アモーレス・ペロス』は、今月ラテンアメリカ全土の劇場で再公開されるほか、映画配信サービスMubiによって10月24日より全世界でストリーミング配信が開始される。

さらに、撮影されたものの本編未使用となった膨大なフッテージ(約98万5000フィート)を使用したインスタレーション「Sueño Perro: Alejandro G. Iñárritu’s Celluloid Installation」も開催。ミラノ、メキシコシティでの展示を経て、来年2月にはロサンゼルスのLACMA(ロサンゼルス・カウンティ美術館)に巡回する予定だ。

常に革新的な映像表現を追求し続けるイニャリトゥ監督。デビュー作の再評価とトム・クルーズとの新作への期待は、ますます高まっている。