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アメリカ入国審査、観光客のSNS履歴5年分を調査へ。ESTA対象者も厳格化の対象に


米国税関・国境警備局(CBP)が9日(火)に連邦官報へ提出した提案によると、英国、フランス、ドイツ、韓国などを含むビザ免除プログラム(VWP)対象国の旅行者に対し、最大5年分のソーシャルメディア履歴の開示を求める計画があるとNY timesが報じている。

​これにより、日本を含む多くの国からの観光客や短期滞在者が利用する電子渡航認証システム(ESTA)の手続きが、大幅に厳格化される可能性がある。

​ビザ免除プログラム(ESTA)利用者への影響拡大

​今回の変更案は、ビザなしで最大90日間の米国滞在を許可する「ビザ免除プログラム(VWP)」の利用者を対象としている。現在、このプログラムは日本を含む42カ国の国民に適用されており、渡航前に電子渡航認証(ESTA)を取得することが条件となっている。

​これまでESTAの申請は比較的簡易な手続きで完了していたが、CBPの新提案が施行されれば、一般的な観光客であっても入国審査の段階でプライバシーに関わる詳細な情報の提供を義務付けられることになる。

​過去10年のメールアドレスなど広範な個人情報を要求

​連邦官報に提出された文書によると、CBPは申請者に対し、以下の情報の提出を求める計画である。

  • ソーシャルメディア履歴: 過去5年分のアカウント情報および履歴
  • 連絡先情報: 過去10年間に使用した電子メールアドレス
  • 家族構成の詳細: 両親、配偶者、兄弟姉妹、子供の氏名、生年月日、居住地、出生地

​現行のESTAシステムでは、40ドルの申請料とともに、電子メールアドレス、住所、電話番号、緊急連絡先などの基本的な情報の提出のみが求められており、認証は2年間有効である。今回の提案は、この既存の枠組みを大きく超える個人情報の収集を目指すものである。

​専門職ビザ等に続く厳格化、観光業界からは懸念の声

​今回のCBPによる動きは、H-1Bビザ(専門職向け)や学生・研究者ビザの申請者に対してすでに実施されているソーシャルメディア審査の流れを汲むものである。

​米国政府は入国管理の厳格化を進めており、多くの訪問者から新たに250ドルの「ビザ適正化手数料(visa integrity fee)」を徴収する計画も保留中である(ただし、ビザ免除プログラム利用者はこの特定手数料の対象外となる見込み)。

​こうした一連の規制強化に対し、旅行業界からは強い反発の声が上がっている。11月には、20社以上の観光・旅行関連企業が連名で反対表明書に署名した。業界団体は、厳格な審査や手数料の導入が、来年のワールドカップなどの主要イベントを含む米国への海外旅行需要を冷え込ませ、数百万人の観光客を遠ざける要因になりかねないと懸念を表明している