アジア全域の映画を対象とした権威ある映画賞「アジア・フィルム・アワード(AFA)」の主催者は4日、2026年に香港で開催予定の第19回授賞式について、その規模を大幅に縮小すると発表した。香港で昨年発生し、数十年で最悪の被害を出した大規模火災の影響を受け、コンペティション部門の選出およびレッドカーペットイベントを中止する。
追悼の意を表し「厳粛かつミニマリスト」な式典へ
アジア・フィルム・アワード・アカデミー(AFAアカデミー)によると、2026年3月に香港で開催予定の第19回授賞式は、従来の華やかな祝典からプログラムを大幅に変更する。作品賞、監督賞、俳優賞、技術賞などを競う通常のコンペティション形式を取りやめ、少数の「特別賞」のみを授与する形へと移行する。
主催者はこの変更について、「厳粛かつミニマリスト(最小限)なマナー」で執り行うと説明しており、映画界の功績を称えつつも、祝祭的な要素は極力排除される見通しだ。
開催縮小の背景にある「香港火災」の悲劇
今回の決定の背景には、開催地である香港を襲った未曾有の悲劇がある。昨年、香港の住宅団地で発生した火災は、死者150人以上、数千人が家を失うという、同都市において過去数十年で最も多くの犠牲者を出す惨事となった。
AFAアカデミーのウィルフレッド・ウォン(王英偉)会長は声明の中で次のように述べている。
「これは熟慮の末の決断である。現在の環境において、授賞式を厳粛かつ簡素な形式で行うことが最も適切な措置であると考えた。社会のあらゆるセクターへの敬意を表し、抑制された方法で映画人を称えることを選択した」
また、主催者は決定の理由として、災害が市民や地域の映画コミュニティに与え続けている心理的重圧を挙げた。さらに、香港政府が公式な祝賀行事を延期し、当面の間は公的イベントのトーンを控えめにするよう推奨している方針にも言及している。
社会的情勢と映画賞のあり方
被災地では現在も深い悲しみが続いており、大規模な祝賀イベントに対する市民感情は過敏になっている。当局はコミュニティが喪失とその余波に向き合う中での慎重な行動を呼びかけている一方、災害を巡る市民活動や独立調査の要求に対しては抑制的な姿勢を見せている。
こうした社会的・政治的な文脈の中、AFA側は2026年の開催について「祝祭(ガラ)」としてではなく、地域の映画制作の功績に対する「敬意ある承認」の場とすることを意図しているという。
今後の展望とAFAの役割
2007年に創設されたアジア・フィルム・アワードは、日本、韓国、インド、中国本土、香港、東南アジアなど、アジア全域の映画と才能にスポットライトを当てる地域最大級の映画賞へと成長した。例年、香港で開催されるコンテンツ見本市「フィルマート(Filmart)」の直前に開催され、業界の重要な交流の場としても機能してきた。
今回、式典の装飾や演出は縮小されるものの、AFAアカデミーは「上映会、教育プログラム、持続的な業界支援を通じてアジア映画をサポートする」という本来の使命に変更はないと強調している。
なお、昨年の授賞式では、パヤル・カパディア監督の『私たちが光と想うすべて』が作品賞を受賞し、日本からは『敵』の吉田大八監督が監督賞を、香港のショーン・ラウが『お父さん(原題:Papa)』で主演男優賞を受賞していた。
2026年の特別賞の受賞者や具体的なプログラムの詳細は、イベント開催日が近づいた段階で改めて発表される予定である。
