脚本家・生方美久の新作がついにベールを脱いだ。 『silent』や『海のはじまり』といった繊細な心情描写で知られる彼女が今回挑んだのは、なんと「嘘」をテーマにしたコミカルかつスリリングな会話劇だ。第1話「メリークリスマス、嘘つきたち」は、新潟の雪深いアーケード街にある一軒の居酒屋を舞台に、予測不能な四重奏が幕を開けた。
元夫婦の「甘え」と「毒」の応酬
物語は、菊地凛子演じる大森みつ子が、雪を被りながら居酒屋へ入るところから始まる。 待ち合わせの相手は、元夫の小林幸助(錦戸亮)。彼が遅刻して現れた瞬間から、このドラマのエンジンの回転数が一気に上がる。「遅刻は相手への甘え」と一喝するみつ子に対し、悪びれもせずジャスミンティーを注文する幸助。この冒頭のやり取りだけで、二人の関係性が透けて見えるようだ。
幸助はとにかく「愛すべきクズ」としての解像度が高い。不倫が原因で離婚したにもかかわらず、平気で「体調が悪いと嘘をつくと、みつ子が優しくしてくれるから」と正当化する。 しかし、本当はカレーが嫌いなのに、みつ子との生活を円滑にするために好きだと言い続けていたという「生活の嘘」のエピソードには、笑いと共に妙なリアリティがあった。錦戸亮の、どこか憎めない佇まいが、幸助というキャラクターに説得力を与えている。
偶然か、必然か? 異物たちが混ざり合う
第一話前半は、みつ子と幸助の痴話喧嘩に終始したが、ここで終わらないのが本作の面白いところだ。 そこに割って入るのが、塩野瑛久演じる自称「イケメン結婚詐欺師」の中村と、頭から血を流して現れた竹原ピストル演じる並木正義である。
テレビでは「ひき逃げ事件」と「結婚詐欺」のニュースが流れる中、明らかに怪しい二人が、みつ子たちのテーブルに加わる展開はカオスそのもの。特に竹原ピストルの異様さは画面越しにも緊張感が伝わってくる。ひき逃げ犯の車が事故を起こして見つかったというニュースが流れているところに、頭から血を流した状態で入ってくる竹原ピストル。彼が自己紹介で「新潟県警の刑事だ」と名乗った瞬間、この空間における「嘘」と「真実」の境界線が一気に曖昧になった。
「嘘」が現実を侵食する
第1話で特に印象的だったのは、幸助が語った「嘘」に関する持論だ。 「お腹が痛いと嘘をついていたら、本当に痛くなるようになった」 「嘘つきだと決めつけた方が嘘つきになる」 一見へ理屈のようだが、このドラマの核心を突いているようにも思える。
結婚詐欺師の中村が「結婚は騙し合うのが一番幸せ」と語るように、ここでは誰もが何かを演じ、何かを隠している。幸助が口にした「宝くじで3億当たった」という話も、果たして本当なのか、それとも狂言なのか。
奇妙な4人が一つのテーブルを囲み、嘘か本当か分からない話を転がしていく様は、まさに質の高い舞台演劇を見ているような没入感があった。 ひき逃げ犯の逃走、結婚詐欺の引退、そして幸助の不倫相手だった「与田真理子を消しませんか」という中村の言葉。それぞれの「嘘」がどのように交錯し、どんな真実(あるいはさらなる嘘)に辿り着くのか。次回以降、この騙し合いの行方から目が離せない。
