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映画レビュー『劇場版空の境界 未来福音』【ネタバレあり】

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2007年から2009年にかけて劇場公開され、2010年には1週間限定で終章が公開された空の境界シリーズ。中編のシリーズを連続で劇場公開するという新しい興行形態を打ち立てた記念碑的なシリーズが久々にスクリーンに帰ってきました。今回の映像化は同人タイトルで2008年に発表された未来福音の映像化。本作の本編の再度ストーリー的な要素の強い作品で、脇役だったキャラクターや本編の事件の裏で関わりのあった人物などが登場してきます。
そしてこのシリーズでは最も時間軸が未来であろう2010年のエピソードも登場。そこには両儀未那(りょうぎ まな)も登場。その名前からもわかる通り、本作の主人公両儀式の娘です。作品中ではっきりと言及はされませんが、父親は黒桐幹也のようですね。父親は片目がないとか言ってるし。

未来福音のテーマとなるのは「未来」。このシリーズとしては珍しい。大抵過去や、起源といったものが重要なキーワードとなる空の境界シリーズですが、番外編のような作品ということもあって趣向を変えています。
空の境界 未来福音 (星海社文庫)

1998年8月、黒桐幹也は未来を予測できる目「未来視」を持つ少女瀬尾静音(学校での鮮花のルームメイト)と出会う。彼女は未来に起こる出来事を映像として見ることができる能力を持っている。その能力のせいで彼女は常に悲劇に2度立ち会わなくてはいけないという悩みを抱えている。本作では実家の飼っている犬の死を未来視でみてしまい、その数日後に実際に犬の死を迎えるというエピソードで表現している。
蒼崎橙子曰く、未来視の能力には2種類あって、瀬尾静音の持つ能力は「予測」であり、周囲の状況から収集した情報を基に未来を予測演算するタイプのもの。それに対してもう1つの未来視のタイプは「測定」。この能力を持った人物が今回式と対峙することになる爆弾魔・倉密メルカという14歳の爆弾魔。彼の能力「測定」は予測とちがって、要素を測定し数値を埋めていくことで起き得る未来を限定し実現してしまう能力のこと。
メルカはこの能力を使って爆弾魔を職業として暮らしている。ある日、仕事現場の付近にいたところを式に目撃されて以来、式を付け狙うようになる。対峙する式にその測定の能力で持って爆弾で殺そうとするメルカだったが、確定された未来は形あるものであるので、万物全ての綻びを見る事のできる式の「直死の魔眼」で見通すことのできるものとなり、メルカの計画は失敗。その未来測定を式に一刀両断され、右目の視力と未来視の能力を失う。

12年後、メルカは瓶倉光溜(かめくらみつる)という名義で絵本作家となっていた。そして借金の肩代わりに地元のヤクザ御用達の興信所として働いていた。この元締めが両儀式で、この頃の式には両儀未那という娘がおり、彼女は光溜の絵本の処女作「吸血鬼の涙」のファンで、度々光溜につきまとっていた。
ある日、光溜は式からの以来で裏路地で占いを営む観布子の母(みふねのはは)の元を訪れ、商売をたたむように説得する。この占い師もまた未来を見ることのできる「予言」の能力を持っている。彼女は式や光溜とも面識がある。1998年の爆弾魔事件の時にも登場するが、その以前にも、式の男人格である織とも面識がある。織の死を本人に告げていたこともあってそれがエピソーグ的に最後に登場する。
未那はこの占い師のことが気に入り、光溜に母親を説得するように言いつけて、物語は幕を閉じる。

本作の主人公は両儀式ですが、このサイドストーリーではメルカがもう1人の主人公のようなポジションとなっています。未来を決定できる能力を持った人間が式によって未来の運命を変えられてしまう。しかし、絶望するのではなく、むしろ未来を見えなくなってしっかりと生きていけるように成長しています。
母子2代にまたって振り回されるというのも災難だなあ、とか思いつつ 笑

再度ストーリーという扱いではありますが、本編の補完に留まらず、未来への希望を描いていて(織の最後の暗い道を歩くとこも含めて)非常に面白かったです。
非常に完成度の高いアニメーションでした。

公式サイトはこちら。
未来福音 | 空の境界

予告編はこちら。

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