まさしくゴジラであった。360度どの視点から見てもゴジラだった。姿形だけではなく、そのストーリーもゴジラそのもの。メッセージまでオリジナルにリスペクトがある。つまりこの映画、外見も中身もゴジラである。
反核と人間の業の深さをことの発端にしながら、終盤は怪獣大決戦できちんと盛り上げて、なぜか人類を救って去るゴジラの背中に胸打たれる。
「ああ、俺らはこの背中を見て育ったんだよなあ」と感慨にもふけるわけだが、日本の社会も映画産業も見通しのよくない昨今、ゴジラが太平洋の向こう側に出現したことを寂しく思う。しかし日本の誇るこの怪獣が高らかに復活したはやはり喜ばしい。
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あらすじはいたってシンプル。放射能を食らう番いの怪獣ムートンが人類を侵略し、ゴジラがさっそうと現れアワアワする人間を尻目にこれを退治する。核のエネルギーが未知の脅威を生み出し(ムートン)、それを止めることができるのは人知を超えた力だけ(ゴジラ)という展開に現代へのメッセージが強烈に宿っている。そうした社会派メッセージを持ちながら、きちんと怪獣プロレスで観客を興奮させてくれるのも見事。エンタメの中にも大事なことは言わねばならない、という作り手の拘りがちゃんと見て取れるのがホントに頼もしい。
今のハリウッドはエンタメ作品に深いメッセージを入れるのが上手い。細部への拘りもマニアな観客を満足させるに十分な作り込みでこれもまた立派。
しかし、フィニッシュのアレを直接口にぶち込むとは。あれは汚らしくて実に良い。汚らしく人類は救われた。業が深い。
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