大泉洋の代表作、探偵シリーズの最新作『探偵はBARにいる3』が12月1日から公開される。テレビに映画に舞台にと、多方面で活躍する大泉洋にとっても大作映画初主演作だった1作目から6年、現在の東映の顔とも言うべきシリーズとなった本作だが、シリーズの魅力や現場の雰囲気について聞いた。
現場にはまた一緒にやれる幸せが充満していた
——4年ぶりのシリーズ新作でしたが、久しぶりにお馴染みにメンバーと集まってみていかがでしたか。
大泉洋(以下大泉):今回、監督が吉田監督に交代したんですけど、別の言い方をすると監督以外は変わっていないんですよね。スタッフのみなさんも同じメンバーでしたから、僕もそうですが、また一緒にやれるねみたいな喜びが現場に充満してる気がして、本当に幸せな映画だと思いますね。
——このシリーズって言い意味でマンネリズムが魅力だと思います。大泉さんが探偵を演じるにあたって、あるいは作品全体の核のようなものはなんでしょうか。
大泉:高田との空気感、レギュラーの街の人たちのみなさんとの空気感みたいなものは確立されていて、本当にどんな会話しても楽しくなるような気がするんですよね。
あと僕はやっぱりこの映画は、切なさというか、どこかにそういうものが必要な気がしますね。僕は探偵モノってどこか哀しさが付きまとうものだと思っていて。
この映画のヒロインも、どこか報われないところがあって、それでも探偵は最期に真相を知るんだけど、でもそういうのを全部受けとめて飲みに行くみたいな。最近の映画ではなかなかないようなハードボイルドな台詞回しなんかもそうですけど、独特の世界観がすごくいいですよね。
——今回の撮影に入る前から脚本に関して綿密に意見を出されたと聞きました。
大泉:僕がこういうストーリーにしようとか、そういう話はしてなくて、本作りは基本的にはお任せしてるんですけど、僕が一番最初の観客のつもりで、これではまだ弱いんじゃないのとか意見を言わせていただきました。
やっぱり東映さんにもう1本作ってもらうためには、今回の映画を圧倒的に面白いものしないといけないと思ってたんです。失速したらここで終わっちゃうかもしれないので。3部作って完結するにあたってキレイだし。(笑)
最終的には納得できる、とても面白い本になったと思いますね。
——1作目を作っている時にこんな風にシリーズにしていきたいという希望はあったのですか。
大泉:最初から東映さんにはシリーズにしたいとは言われてました。ただ、それもヒットしないとできないことだったんで、僕はただただプレッシャーでしたね。
でも、当たんなかったら作れないじゃないですかとか僕は言ってたんですけど、早々に東映さんがシリーズ化発表しちゃって、どうすんの外れたらとかプロデューサーさんに愚痴った憶えもありますけど(笑)
何とか3本くらいは僕も作りたいと思ってたんで、本当に3作目まで作れてホッとしたという感じですね。なので、ここから先はできるかぎり続けていきたい。
——今回もお約束の探偵がヒドい目にあうシーンがありますね。あのシーンの撮影はどうでしたか。
大泉:大変でしたね。裸ですし体感的にはマイナス何十度って感じの世界ですね。(笑) 海だから、風も強いし、船上だから、余計に風を強く感じるし最悪ですよ。(笑)
まあ、台本にはパンツ一丁でとは書いてないんですよ。書いてないんだけど、監督は、ガウンとパンツでいきたいとこだわってまして。でも、僕がシーンの繋がり的にガウンとパンツじゃおかしいので、服着ててもいいんじゃないですかって言ったんですけどね。(笑) ただ、監は、画的にガウンとパンツのが面白いと思うと言うので、僕も「そうかあ」と。その方が面白いと言われちゃあしょうがないのでやるかと。でもガウンを着てるのはシーンのつながり上、僕は気持ち悪いから結局パンツ一丁になってしまったんですが。(笑)
——ほんとに毎回体当たりの演技ですよね。
大泉:そうですね。毎回探偵の拷問シーン楽しみにしてますとか言われてもね、主演の拷問シーンが見せ場ってそんな映画ある?って感じですよね。(笑)
——大泉さんから見て、前2作と本作の違うポイントはありますか。
大泉:今回PG12のレイティングがないですし、お子さまから年配の方まで、より幅広く楽しめるものになったと思います。
あと、2は派手でエンタメ性が強いというか、アクションも多めでしたけど、今回はもう少し1に寄せた、しっとりした大人の探偵にしたいねって話は最初からしてました。
——高田との関係性にもちょっと変化が見られますね。
大泉:単純に年とったというのもあるんじゃないですかね。キャストもスタッフもみんな同じでやってるわけですけど、1作目から6年たってるわけですから、30後半からの6年ってそれはそれででかいんでしょうね。若い時の6年もでかいけど、おっさんの6年もでかいですよ。単純に身体も言うこと聞かないし。(笑)
そのぶん探偵が言う台詞も、僕自身は変わった実感はないですけど、6年前の僕が同じ台詞言うのとでは少し違うのかなとは思いましたね。それがシリーズやってる面白さかもしれないですね。年月が経つっていうのが。
原作を超えるために必要なこと
——大泉さんはこの映画の他にも、漫画やアニメも含めて有名原作の映画化作品に出演する機会が多いと思うのですが、どの作品でも大泉さんは原作ファンからも高い評価を得ていますよね。原作モノのキャラを演じる時に気をつけていることはあるのでしょうか。
大泉:特に漫画なんですけど、ビジュアルが最初からありますから、できるだけ原作のビジュアルに寄せてあげたい、というのはあります。あまりにもコスプレみたくなっちゃうんだったらダメだと思いますけど。
ただ、日本中からそっくりさん探してやればいいかと言うとそれも違うと思うんですよね。芝居ってそういうもんじゃないですから、原作をなぞるだけはあんまりよろしくないと思ってるんですよね。観終わった時におもしろかったね、ってなるのが大事なわけで。反対に、原作なぞるだけだと絶対原作超えられないですからね。
原作と全然違うものにするって気持ちでやっと原作と肩を並べられるくらいの面白さにできるかもしれない。僕はそういう思いでやってますね。
札幌が自分の街。帰ってくると安心する
——この映画の舞台の札幌は大泉さんにとってどんな存在なんでしょうか。
大泉:この業界の人って早い人なら高校くらいから東京でて仕事してる人も多いですけど、僕も含めてNACSの連中は東京の仕事始めるのは30超えてからでしたから、東京を自分の街だと思えるかと言うとどうもしっくりこないんです。やっぱりどっちかと言うと札幌なんですよね。
僕の場合、ありがたいことに月に3回は東京と札幌の往復があるから安心感があるけど、これが帰れないとなるとやっぱり息苦しいと思う。海の魚がずっと川で泳がされてる気分になってくるというか。
やっぱり千歳空港着いて、空気吸った瞬間、ああ良い空気吸ったな、帰ってきたなって気がするんですよね。