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コメディの名手『最強のふたり』の監督が語る、最新作『セラヴィ!』の魅力とは

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 頸髄損傷になった大富豪の中年男性と彼を介護する黒人青年の友情を描き、日本でも大ヒットを記録した『最強のふたり』のエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督の最新作、「セラヴィ!」が7月6日から公開される。

 今回は二人が選んだ題材は結婚式。しかし主人公は新郎新婦ではなく、結婚式を取り仕切るウェディング・プランナーだ。

 30年以上、数多くの結婚式を手がけてきたベテランプランナーのマックスは引退を考え始めていたが、ある日17世紀の古城を会場にした結婚式の依頼を持ちかけられる。豪華な式を成功させるため、入念な準備をして当日の式に臨むマックスだが、集まったスタッフはポンコツだらけで、次々とハプニングが発生する。マックスはそれでもなんとか式を無事に終えようと奮闘するが、式は予想外の方向に転がっていく。

『最強のふたり』では社会階層の違う二人の友情を、『サンバ』では移民問題をユーモア交えて描いた二人の監督は、今作でもフランス社会の今をユーモアたっぷりに描いている。

 フランス映画祭のため来日していたエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ監督に、本作について話をうかがった。

 

結婚式は社会の縮図。コメディに最適の題材

——お二人は、いつもユニークな題材を選びますね。今回なぜ結婚式を映画の題材にしたのですか。

オリヴィエ・ナカシュ監督(左)とエリック・トレダノ監督(右)

エリック・トレダノ(以下トレダノ):実は学生の時に短編映画を作るための資金稼ぎでオリヴィエと一緒に結婚式の裏方のアルバイトをしていたんです。当時はイヤイヤやってたんですが、後になって映画の題材として面白いなと思うようになったんです。映画にしようと決めてからは、結婚式の裏方に対するネガティブな感情もなくなりましたね。

 
——学生時代の経験が基になっているのですね。ということは長年温めていた企画なのですか。

オリヴィエ・ナカシュ(以下ナカシュ):そういうわけでもないんですが、今回私たちが描きたかったのは、結婚式そのものというよりも、結婚式の現場にはフランスの社会が凝縮されているところなんです。結婚式は金持ちも、労働者も、普通だったら出会わない人たちが一堂に会する不思議な空間です。結婚式を通してフランス社会を描きたかったんです。

 
——お二人がその仕事をしていた時と今では、フランス社会もずいぶん変わったと思いますが、結婚式の現場もずいぶん変わっているのですか。

トレダノ:大きく変化はしていませんが、なくなった役職はありますね。例えばこの映画ではプロのカメラマンが登場します。かつてカメラマンは結婚式には欠かせませんでしたが、今は皆自分のスマホで撮影しますから、必要とされなくなりつつあります。映画は時代の証言だなんて言い方もありますが、まさに社会の変化がこの映画にも写っていると思います。

 結婚式ってコメディの題材にもってこいだと思います。なぜなら皆がストレスを感じやすいからです。結婚式は絶対に失敗できませんから。全て滞りなく楽譜の通りに演奏しないといけないようなもので、そうなるようにしっかりと準備して組織をオーガナイズする必要があります。それもまた社会の縮図として機能する点ですね。社会の生態系がそこにはあるのです。

 
——いつもお二人で監督をされていますが、どう役割分担をしているのですか。

ナカシュ:二十年前から二人でやっていますから、とくに分担はせずにいつも二人で決めて勧めています。シナリオも二人で書きますし、現場でも二人で相談して全て決めているんです。

 
——意見が食い違いことはないのですか。

トレダノ:よくあるけど、そういう場合はいつも私が正しいんですよ。(笑)

© 2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

コメディは社会問題を描く良い手段

——お二人はやはりコメディに強いこだわりがあるのですか。

ナカシュ:まず一番大事なのは映画を作ることですが、コメディを通して社会を描くことを大切にしています。その上で観客が笑い転げてくれるものをいつも作りたいと思っているんです。

 
——まさにそういう映画になっていたと思います。僕はフランスの結婚式を見たのは初めてだったんですが、ああいう大規模な結婚式はフランスでは珍しくないのですか。

トレダノ:今回はブルジョワ階級の人たちの結婚式を描きました。あれは一般的なものではないですね。17世紀のお城を会場にしていますが、ああいった場所で式を挙げるというのは、暗に自分たちが上位階層の人間だと思っているということです。

 新郎新婦は、ブルジョワ階級の裕福な人間だけれど、そこで働いている人たちは低賃金労働者たちだったりするわけです。こういうギャップをうまく笑いにつなげるのがフランスのコメディの伝統です。

 
——確かにお二人の映画は前作『サンバ』も前々作『最強のふたり』も、階級の違う人達が一緒になることで起きるコメディでしたね。

トレダノ:私たちの関心はまさにそこにあるんです。

 
——フランスでは、コメディは社会問題を伝える有効な手段として認識されているんですね。

ナカシュ:そうですね。フランスでは笑いを通して社会問題を伝えるのは一般的です。フランスである人が言っていたのですが、笑いは矢のようなものだと。これはつまり人と人を結ぶ一番の近道が笑いだということです。

 
——なるほど。あと結婚式の現場でいろんな人種の人間が働いていました。あれもフランスの今を反映しているのですか。

トレダノ:その通りです。われわれも昔アルバイトしていましたが、今回改めて結婚式のことをリサーチしてみたら、そこにパキスタンの移民や、黒人、アラブの人など実に多様な人種が働いていることはわかったんです。

© 2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

ナカシュ:ところで、今の欧州では移民問題はとても重大なのですが、日本ではどうなのでしょうか。

 
——日本政府は移民とは言わず、技能実習という扱いで外国人労働者を増やしています。これは元々発展途上の地域の人々に日本の技術を学んでもらって自国の経済発展に寄与してもらう、という名目の制度なんですが、安い労働力の確保のために用いられているのが実態です。

トレダノ:そうした人たちは、主にどこから来るのですか。

 
——主に中国やベトナムなどの東南アジアの国々が多いようです。日本は少子化で労働力が減少しています。なので外国人労働者を受け入れないと労働力が足りないのですが、安い労働力を確保したい企業はこの制度を活用するようになりました。様々な問題が指摘されていて、奴隷労働と変わらないのではという批判もありますし、ひどい待遇が話題になることもあります。

トレダノ:なるほど。それはコメディの良いネタになりそうな気がしますね。

 

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